生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

2通の手紙-イル・ポスティーノ-

三連休に太陽が顔を見せることはなかった。
今日もどんよりとした曇天。

手紙を書くために外へ出た。
遠出するには重たすぎる天気なので、家の近くで場所を探す。
といっても、気の利いたカフェも、スターバックスさえもない我が地元。
しかたがないので、駅前のマクドナルドに入る。



手紙。
私は今、久しぶりに、便箋に手紙を書こうとしている。
メールではなく、あえて手紙にするのは、相手に気安く感情をぶつけないため。
自分の気持ちを整理して、白い便箋に黒いペンを走らせる儀式が、適度な緊張感をもたらしてくれて、本当に伝えたいことを見つめなおすよい機会になるのではないかと思ったから。
あるいは、かたちのある紙という媒体には、愛や温もりを乗せやすいような気もする。

今日は1枚書いて、詰まってしまった。
もう一度、いいえ、何度でも書きなおそう。
やがて心が解けたとき、素直に、滑らかにペンは走るはずだ。
気持ちが追いつくまで、ゆっくりと、いくらでも時間をかければいい。

時には、そんな気分のときもある。

きのう、手紙をもらった。
今私が手紙を書こうとしている相手ではなく、また別の、大切な人から。
その人も私と同じように、メールではなく手紙という手段を選んだのには、理由があるだろう。
それは大切な、とても大切な言葉だった。
流暢でもなく言葉が多いタイプでもないその人によって、便箋というよりレポート用紙のような紙に綴られた文章の、よどみなさと隙のなさは、何度も書き直した結果だろうか。
一語一語が胸に刺さる。
私はこの人にも、手紙を書かなければならない。

好きな映画は?と訊かれたら、必ず頭をよぎる作品の一つ。
「イル・ポスティーノ」。
イタリア語で、郵便やさん。

主人公マリオは丘の上に住む有名な詩人の元へ世界中から届くファンレターを届ける。
貧しい配達人は、詩人から言葉の世界の広がりと奥行きを知る。
最初は人の言葉を借りるだけだった彼が、やがて大切な想いを、選び抜かれた言葉に乗せることを知る。

最近は、郵便受けを開けても、ダイレクトメールか請求書しか入っていない。
心を躍らせながら、心を潰しながら、はやる気持ちで郵便やさんを待った日々は遠い。

小学校に上がるより前、好きな男の子に手紙を書いて、ポストに入れるということを知らず、自宅の郵便受けにそれを入れたせいで、親に見つかって笑われたことがある。
そんな日々は、もっともっと遠い。

誰かの手を介して、本当の意味で、野を越え、山を越え、海を越えて届く手紙。
封筒の中からは、遠い異国や、遥か故郷の香りがする。

郵便やさんの通る道。
「イル・ポスティーノ」は、真っ青な地中海と真っ白な岸壁を背景にして自転車をこぐ。

その手紙と、その想いは、彼と一緒に旅をする。


イル・ポスティーノ IL POSTINO(1995年・伊)
監督:マイケル・ラドフォード
出演:フィリップ・ノワレ、マリア・G・クチノッタ 、マッシモ・トロイージ他
[PR]
by yukotto1 | 2004-10-12 00:06 | 泣ける映画