生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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安定と緊張のバランス-マネートレーダー/銀行崩壊-

初めてヘッドハンターなるものからメールが来た。会ったこともない外人から、英語で。

この業界に転職して1年半。
噂には聞いていたけれど、自分にも声がかかるとはリアリティがなかった。
改めて、「そういう世界」で働いているのだなと感じる。

間違ってはいけない。
この業界が「そういう世界」なだけであって、私が多くの企業から希求されるような、立派な人間であるわけではない。



それでも、1年半やってきた(クビにはならなかった)ことで、一応、この業界で「使いものくらいにはなる」と判断されたということだろう。
次の転職もしたいと思えば、何かしら見つかるということだ。

最近ROMしている、知人の知人(会ったことはない)のブログによると、半年前に外資系証券会社を辞めて起業した彼には、最近、嵐のようなヘッドハントがあるのだと言う。
起業というリスクを伴うチャレンジをしながらも、仮に失敗しても戻れるフィールドがあるということは、なかなか恵まれているし、心身ともにハードな日々を送っていたと予想される証券マン時代(現在の方がもっとハードだと思うけど)がその担保になっているということだ。
やはり、がんばった甲斐というのはあるのだな。

昨年うちの会社を辞めた女性マネージャーも、1年以上、料理を習ったり、旅行をしたりと「休憩」していたけれど、先日、ちゃんと大手企業の経営企画スタッフとして再就職した。
退職する以前の彼女は、それはもう大変なハードワーカーだったけれど。

チャレンジであれ、休憩であれ、会社に縛られず自由に生きるということ、それは私の一つの理想。
それを担保するだけのものが、今の毎日の中で築かれていっているといいなと思う。

「資格」と呼べるものは一つも持っていないけれど、誰にも奪えない「確かなもの」を手に入れたい気持ちはずっとある。
基本的に、臆病者なので。

ところで、刺激とスリルに満ちた金融業界、と言って思い出すのが、「マネートレーダー/銀行崩壊」という映画。
イギリスの名門ベアリングス銀行をたった一人で破綻に導いてしまった銀行員の実話。

先物取引の第一線トレーダー、ニックは階級社会であるイギリス生まれでありながら、学歴も家柄もなく、才能と強運だけでのし上がった、言わば成り上がり者。
一人でその銀行の全利益の1割を稼ぎ出し、シンガポール市場で彼を知らない者はいない。
彼の年収は裕に十億円を超えた。

そんな彼が、ちょっとした歯車の違いで損失を出す。
1995年、阪神大震災をきっかけにアジア市場が暴落するのだ。
最初の損失は5000万ポンド。
巨大な損失だが、彼はその損失を架空取引口座に隠す。
そしてそれを補填するため、憑かれたように賭けを繰り返す。

運が離れると、悪い方にばかり進むものだ。
彼は、やがて回復し難いほどの損失を銀行に与える。
イギリス最古の商業銀行は、あっけなく幕を閉じることになる。

ニックの栄光も、はかなく終わる。
そればかりか、彼は6年半の懲役刑にふすことになる。

成功者には、大きな見返りがある。
しかし、ほんの少しの風向きで、突然解雇されることもある、「そういう世界」。
引き金になるのは些細な失敗ばかりではない。
会社の経営状況だったり、ちょっとした方針転換だったり、市場の好不況だったり、個人には抗しがたいものであることも多い。
ニックが手を染めたものは、誰もが陥ることとは言えないけれど、その陰には、アップダウンの激しさに一種麻痺してしまった感覚、そして耐え難いプレッシャーがあったことは容易に想像できる。

この映画の主人公は、ユアン・マクレガーが演じている。
友人の元彼のアメリカ人が米系証券会社に勤めていて、ユアン・マクレガーにちょっと似ているので、この映画のことを思い出しては、彼のことを心配する。
彼は高級ドイツ車にレインボーブリッジの根元の高級マンションで、ほんの27歳とは思えないほど贅沢な暮らしをしているけれど、でもいつもピリピリしている。
会社で、隣の席の人が「明日から来なくていいよ」と宣告される度、彼は神経をすり減らし、下手をすると周囲の人に当たったり、大切な人を傷つけたりする。
その結果、本当に大切な存在を失ったりもする。

バランスが、難しい。
確固たるものと、アップダウンのバランス。
安定と緊張のバランス。

そういえば、人材流動にはシーズンがあると聞いたこともある。
会社を辞めるタイミングとして年末を選ぶ人が多く、採用側も人事異動調整を始めるため、10月とか11月にはぐっと求人と求職者が増えるのだとか。
大きく動く転職者たちは、それぞれに一体何を求め、何を思うのだろう?

ちなみに、私は「外資系金融」業界に身を置いているわけではないので、念のため。




マネートレーダー/銀行崩壊 Rogue Trader
(1998年・英)
監督:ジェームズ・ディアデン
出演:ユアン・マクレガー、アンナ・フリエル、トム・ウー他
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by yukotto1 | 2004-10-27 02:26 | 考えてしまう映画