生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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映画にまつわるエトセトラ-SAW-

a0032317_11522646.jpg寝不足がたたり、寸暇のうちにさえ睡魔が襲ってくる祝日の午後、六本木ヒルズで映画を観た。
初めて私がシネコンと名のつくところに行ったのは、大学1年のとき、ホームステイ先のニュージーランドだったと記憶している。



お題目は、メル・ギブソン監督・主演の「ブレイブハート」だった。
イングランドとスコットランドの戦争の話。
英語が生半可にしか分からないのもあってか、描写のグロテスクさばかりを憶えている。
とにかく、野蛮な戦闘シーンが多いのだ。

映画のことより、シネマコンプレックスというしくみの方が印象的だった。
1つの大きな建物の中に10近いスクリーンがあって、映画館に着いてから、「どれにしようかな?」と選ぶことができる。
何時に何をやっているかなんて調べなくても、そこに行けば、メジャーな大作からミニシアター系、見事なB級、カルトにお子様映画まで取り揃えてあって、何かしら興味を引くものに出会える。
「とにかく映画観よう」の思いつきだけで、そこへ行けばいい、その気軽さがいい。
あと、全席指定制。これもいい。

それから、ポップコーンの匂い。
甘いカラメルの匂いが、ロビーに充満している。
それは、映画という体験を記憶中枢に残す媒体のような気もする。
あれを嗅ぐと、子どものように心が躍るのはなぜだろう。
幼い頃に連れられて行ったアニメ映画や、高校生のとき初めて男の子と観に行ったハズレ映画の体験を、思い出すのはなぜだろう。
あのとき、シネコンはなかったし、ポップコーンの匂いなんてきっとしてはいなかったはずなのに。
映画が立派な「おでかけ」であった頃の、そのウキウキとした特別感が、ポップコーンで喚起されるかのようだ。

あの充満する匂いは、少しおおげさな気がするので、「わざと」だと解釈している。
嗅覚のような原始的で本能的な感覚の記憶は、心理効果としてきっと有効なのだろう。

カラメルの甘い匂いの中、祝日の午後、人ゴミにもまれながらチケットを求めようと列に並んだ。
嫌な予感は的中して、お目当ての「2046」は完売。
「コラテラル」完売、「キャットウーマン」完売・・・で、空いていたのは唯一「SAW」。
知らないタイトルだった。

一緒に来ていた友人が「なんでもいいよ」と言うので、内容も全く知らず、「じゃあ」ということで「SAW」2枚と告げる。
女性は1000円。水曜日だからレディスデーだと思い出した。
最近は、夫婦の片方が50歳以上だったら二人で2000円とか、なんかいろいろあるらしい。
映画協会も色々考えるんだな。

チケットと一緒に、「SAW」と「ターミナル」と「ブリジット・ジョーンズの日記」の新作、「ニュースの天才」のチラシをもらった。
「SAW」はどうやらサスペンススリラーものらしい。R-15指定。グロイのか?
フレコミは、「CUBE meets SEVEN」。
ブラッド・ピット主演のサイコサスペンス「セブン」と、ソリッド・スリラー(異常なシチュエーションで繰り広げられる心理的に怖い系)のさきがけにして傑作の一つ「CUBE」、いずれも私の好きな作品がまじったというのだから、なかなか面白いかもしれない。
苦し紛れの選択だったけれど、期待が高まる。

私は、本編はもちろんだけれど映画の予告編というのも好きで、必ず見逃せない。
(ビデオでも本編の前に10分近く続く作品紹介が好きで、DVDにはそれがないのが逆に残念なくらい)
さらに、予告編の前の注意事項さえも好き。
「携帯を切れ」とか、「私語はやめろ」とか「ポップコーンを買え」とか、そういうやつ。
最近は、なかなか工夫をこらして、作品的にも面白い作りになっていることが多く、隣の連れと話すより、思わずスクリーンに注目してしまう。
そんなわけで、お行儀よく早めに席に座る、模範的映画鑑賞者の私。

そうそう、映画館ならではのCMもいい。
小さな映画館では、「アトレ○○でお買い物を」くらいローカルで渋いCMが流れたりして、それはそれで楽しめるし、結構メジャーなクライアントでも映画館でしかお目にかかれないCMもある。

印象に残っているのはDe BeersのCMで、イケメン外人が次々と登場し、それぞれに女性の名前を呼んでいくもの。
「Jane・・・」「Maria・・・」「Anne・・・」といった感じに。
彼らは皆、大切そうにこぶしを胸に当てている。
そして、最後に登場した男性が手のひらを開く。
そこには、ダイヤモンド。キラキラひかる、ダイヤモンド。
映画館の暗闇の中、恋人と一緒に来ている人も多いだろう。
当事者にとってみればちょっとしたプレッシャーになるかもしれないけれど、私は結構、あれ、ぐっと来た。
なんだろう、あんなイケメンにも、その心に本当に宿るのは、たった一人だけなのよね、なんて。

前置きはこれくらいにして、「SAW」本編。

窓のないタイル張りの広いバスルームで目が覚める2人の男。
蛍光灯が神経質にパチパチと音を立てる、白い部屋。
決して清潔とは言えない、廃墟のようで冷たい空間。

男はそれぞれ対角線上に、部屋の隅の鉄のパイプに重い鎖で片足をつながれている。
彼らの中央には、銃で頭を打ち抜いた血だらけの自殺体。

記憶がない。
どうやってここに来たのか。
なぜ足をつながれているのか。

男2人は面識がない。
お互いを信じるにも疑うにも手がかりがない。

全てが謎に包まれたシチュエーションで、ゲームが始まる。

感想はと言うと、確かに「セブン」と「CUBE」がまじっていた。
様々なディティールに。

展開は二転三転して面白い。
後でなるほどそうか、というしかけもちりばめてある。
極限状態で正気を失う人間の様子を、これでもかこれでもかと見せつける感じ。

プロットを楽しむ作品なので、内容をあまり多く語りたくはないけれど、どことなく違和感をおぼえる部分もあった。
安っぽさが否めない点については、たぶん、セットや役者のせい。

映画が終わった後、友人は「いやー、B級だったねー」と言っていた。
あの混み混みの列の中、ただ一つ空席があった理由がちょっと分かった。

でも、満足度は悪くない。

映画は、特に映画館で観る映画は、「体験」なのだから。
作品そのものの完成度だけじゃない。
チケットに並ぶ列、どの映画にしようと迷う瞬間、レディスデーで得した気持ち、ポップコーンの甘い匂い、予告編を眺めながらお行儀よく座るひととき、映画の後に交わす他愛ない感想。
ぜんぶ、映画の体験。
その全てが、エンタテイメント。
いつか映画館を作るような仕事をするのもいいかもしれない。

本編の前の注意事項の中に、こんなメッセージがあった。

”一本の映画があります。
その映画を完成度が低くてつまらないという人がいます。
ある人は最後まで楽しめたと言います。
どちらが映画の楽しさを知っている人でしょうか”
(正確な言葉を忘れたので、凛さんのブログ「スマの花道」から引用)

こんな言葉を教えてくれるのも、映画にまつわるエトセトラ。




ソウ SAW
(2004年・米)
監督:ジェームズ・ワン
出演:ケアリー・エルウェズ、ダニー・グローヴァー、モニカ・ポッター他


ブレイブハート Braveheart(1995年・米)
監督:メル・ギブソン
出演:メル・ギブソン、ソフィ・マルソー、キャサリン・マコーマック他


セブン SEVEN(1995年・米)
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロウ他


キューブ CUBE(1997年・カナダ)
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
出演:モーリス・ディーン・ウィン、ニコール・デ・ボア、デヴィッド・ヒューレット他
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by yukotto1 | 2004-11-09 03:09 | 怖い映画