生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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シチリアへの誘い-マレーナ-


「どこがいいかな~」
12月の休みにどこか行きたいんだけど、となんとなく相談。
「どういうとこがいいの?」
「寒くなくて、景色がよくて、のんびりできるとこ。でもビーチリゾートはダメ」



友人は、ベトナムはどう?モロッコはどう?オーストラリアもいいぞ、と次々と提案してくれる。
「地中海の島がいいかな、とか思って」
と話を聞いてるんだか聞いてないんだか分からない調子で私が言う。
「じゃあ、シチリアは?」
「ああ、シチリア。いいね。シチリア」
「そうだよ。シチリアに行って先生の本を読むっていうのもなかなか・・・」

先生と言うのは私たちの教養の頃のゼミの先生で、中世シチリア王国に関する本でマルコ・ポーロ賞も受賞された西洋史学の教授。
先生の本を読むかどうかは別にして、シチリア、いい響きだな、と思った。

シチリアといえば、文明の十字路。
ギリシア、ローマ、イスラムと様々な文化、文明が争い、支配し、息づいた土地。
遡る歴史、遡る命が、そこで交わる。
融合の交点ならではの、魅惑的な秘密を宿すかのよう。

今日は、久しぶりに大学の同級生とランチした。
新聞記者をしている彼は、現在整理部(紙面のレイアウトを作る仕事)にいるため、まさに夜中の仕事。
ランチが終わってから出社するとちょうどいいとのことで、「いつもよりかなり早く起きた」という友人とオフィスの下で落ち合った。

友人は言う。
「イスラムの名残があるような世界っていうのは、なんか懐かしいっていうか、すごくイメージを誘うんだよ。
ほんとのイスラムの国だと、砂漠にやしの木って感じで違うんだけど、昔イスラムの文化があったような微妙な街がいい」
「レコンキスタの跡みたいなね?」
「そうそう、レコンキスタ、そうだな、そんな感じ。
白い壁で道がくねってて、坂道を上から見下ろすと、海と空が見える港町で、それって心象風景って言うか、そんな場所がどこかにあるのかないのかも分からないけど、でも心に焼き付いているわけさ。
気がつけば腰には剣を携えて、夕闇が迫って賑わい出した酒場に入ればQUESTの張り紙がしてあるんだ。
そして旅に出るんだよ。砂漠に黄金を探しに・・・ってね」
「冒険なんだね。わかるよ。わかる」
「港町っていうのがいいんだろうね。海に面してて、いろんなものを受け入れて出て行く感じが」

友人の言葉に気分がかなり乗ってきて、ランチの後、そのまま本屋でガイドブックを買った。
パラパラとめくれば、目のさめる様なセロリアンブルーの海と空。
心は自然と吸い込まれる。

追い討ちをかけて、シチリアが多くの映画の舞台だと知る。
「ゴッド・ファーザー」はあまりに有名だけれど、「ニュー・シネマ・パラダイス」「マレーナ」「グラン・ブルー」・・・と、ああなるほどと思わせる美しい映像の映画の名前ばかりが並ぶ。
特に、「マレーナ」におけるモニカ・ベルッチの白いワンピース姿には、釘付けになるほど心奪われた。

民族の混血は、美さえ進化させることが多い。
中央アジアなどに、はっとするような美女が多いことからも分かる。

狂おしいほど艶やかなマレーナ。
惑わすほどに強い存在感。
美しさがゆえに、平凡には生きえなかった女性。
彼女の美しさは、文明が融合する、その土地の魅惑とも近い。
映画の主人公が彼女を忘れられないように、あの映画を観る誰もが彼女の姿を忘れられないだろう。
港町の風景を心象風景だというように、それがイメージでも実物でも、心に焼き付いて離れない映像というのは、ある。

彼女がいる島であれば、呆れるほどに無為な時間も惜しくない。

海と空を一文字にわける水平線。

太陽と潮の香りが、私を誘い始めた。


マレーナ MALENA(2001年・伊)
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:モニカ・ベルッチ、ジュゼッペ・スルファーロ、ルチアーノ・フェデリコ他
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by yukotto1 | 2004-11-17 04:41 | 切ない映画