生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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男言葉、女言葉-転校生-


今日、ちょっとした仕事の手伝いで高田馬場に行った。
この駅で降りるのは、かなり久しぶり。
振り返ってもほとんど記憶がない。

唯一しっかり憶えているのは、私が2度目の受験で上京した折、その一年前に現役で早稲田大学に入学していた高校の同級生と、高田馬場で落ち合ったことだ。
あの駅前のBIG BOXの壁面に巨大な人のかたちが描かれているのがすごく印象的で、なんだかグリコのマークみたいだ、と思った気がする。
気がする、というより、この10年間ほど私は、正直、BIG BOX=グリコのイメージを持ち続けていたと言うのが正しい。
今日、久々に見て、「あ、グリコじゃなかった」と確認したくらいだ。



東京で会った同級生は、ずいぶん大人びて見えた。
一応私も大阪で大学生をやっていたのだけれど、東京の大学生はとてもとても洗練されていると、先入観激しい状態で感じたりもした。
少なくとも彼女は、ちょっと見ないうちに、大人っぽくというか女っぽくなっていたし(高校時代はボーイッシュな感じだった)、なんだか「余裕」みたいなものを醸し出していた。

彼女と駅の近くで食事をした。
私も、東京に住みたいな、と漠然と再確認した。

私が東京を初めて訪れたのは高3になる前の春休み。
志望していた大学を下見した。
キャンパスには人がまばらで、すれ違う大学生がとても大人に見えた。

2回目の上京は最初の受験。
試験の前日に入って、ホテルから試験会場までの道をあらかじめ確認した。
そのときもキャンパスは閑散としていて、私と同じように下見に来たらしい受験生が辺りをキョロキョロと見回しているのが目立った。
私は掲示板の側のベンチに座って、長いことじっとしていた。
銀杏の木は一枚残らず葉が落ちて、冬空に裸をさらしていた。
「私は1年後、ここにいるだろうか。ここに来るのは、今回が最後だろうか」
そんなふうに考えた。

そしてその翌年、再び、私は同じ大学のキャンパスを訪れることになる。
(最終的には、その大学に入学して卒業した)

試験会場で受けた最大のカルチャーショックは、「言葉」だった。
特に、男性の言葉遣いだ。

東京の男性は、女性と同じように、「だよね」と言う。
語尾に「ね」をつける。
関西では、男性はよっぽど丁寧な育ちのいい人以外は「ね」など遣わない。
遣おうものなら、白い目で見られる。

休み時間の度ごとに、「さっきの問題さー、むずかしかったよねー」と言う、男子生徒。
これがものすごい違和感で、一緒に受験していた高校の同級生と、「あれは変化球のプレッシャーや。うちらを陥れようとしよんねんで」と言い交わした。

うわ、きっしょい。さむいぼでるわ。

もちろん、東京にも、標準語にも男言葉、女言葉はある。
少し古い邦画などでは、男は男言葉を、女は女言葉をきれいに遣い分けていることが多い。
いつからそういうの、なくなったんだろう。
昔の人は実際に、ああいう、男言葉、女言葉をしゃべっていたんだろうか。
それとも美化された映画の中だけのことだろうか。

いまだに昼ドラの主人公(主婦)は夫に敬語を遣っているケースが多くて、「そんな夫婦、おらんやろ」と一人ツッコミを入れてしまうように、昔の人も映画を見て「そんなしゃべりかたせんやろ」とツッコんでいたのだろうか。

謎だ。

「転校生」という映画を観た。
1982年、大林宣彦の作品である。

ある意味古典的な設定だが、ちょっとした拍子に二人の中学生の心(体?)が入れ替わってしまう、という話。
男の子が女の子に、女の子が男の子になってしまう。
ここで特徴的に遣われるのが、まさに「男言葉、女言葉」。

女の体になってしまった男の子は、ぶっきらぼうな言葉遣いでガニ股で歩く。
男の体になってしまった女の子は、しなっとした言葉遣いで内股で歩く。

いまどきの中学生なら、男女が入れ替わっても、意外に不自然がないかもしれない。
でも、この物語の表現は、誇張に近いほど「男らしい男の子」、「女らしい女の子」でないと成立しない。

1982年。
私は7歳だったけど、そんなに男女差が激しい時代だったんだろうか。
にわかにはそう思えない。

おそらく映画の中の誇張だと思うが、ただしこの映画の舞台は尾道なので、広島のように「強い男」の育つ土地柄(菅原文太のイメージ)では、もしかしたらそんなふうだったのかも。

今では私も、すっかり東京の男性の「ね」に慣れた。
むしろ、男性の優しい言葉遣いは好き。

もちろん、関西の言葉も好きだけれど。


転校生(1982年・日)
監督:大林宣彦
出演:尾美としのり、小林聡美、佐藤充他
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by yukotto1 | 2005-02-07 01:03 | 笑える映画