生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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匂い立つエロチシズム-オペラ座の怪人-


条件反射的に涙が溢れたのは、久しぶりのことだ。
ストーリーが哀しいからではなく、作品があまりにも美しいから。
良い芸術作品を観ると、胸が震えて涙腺が堪えきれなくなる。

隣の連れに気づかると恥ずかしいので、その涙をぬぐわない、すすらない。
ゆっくりと、ひそやかに、小さく呼吸をするばかり。

映画館は、暗闇の中。



冒頭のシーン。
ベールを脱いだシャンデリアがかつてあった場所へと吊るし上げられていくとともに、クモの巣の張った灰色の客席と舞台は、みるみる色彩と輝きを取り戻していく。
蜀台の蝋燭に次々と灯が点り、パイプオルガンは情熱的な多重奏を響き渡らせる。
ざわめきがよみがえり、色とりどりのドレス、きらびやかな宝石。

若きプリマドンナ、クリスティーヌと、オペラ座に棲む怪人ファントムの悲恋。
そう簡単に名づけるには複雑な感情の交錯がある。

魂の芯に沁みこむ音楽に乗って、ファントムの哀しみは、ミステリアスで情熱的、セクシーでさえある。(それは雪の女王に、とても似ている)
クリスティーヌの意識は遠のきつつ、戸惑いつつ、ファントムに惹かれていく。
すんでのところで引き戻す、ラウルの若く一途な想い。

対峙する二人の男の間で揺れ動く、可憐な歌姫。
理性は拒む。けれど、感性はまどろむ。
恐怖と誘惑、憎悪と愛情。
拮抗する裏腹な感情。

ドラマティックに高まっていく物語に、思わず没頭してしまった。
映画館を出た後も、その夜も、翌日も、音楽が耳から離れず、いつまでも浸っていたい、包まれていたい空気感。

「オペラ座の怪人」は、私の心を潤すものだった。

私がミュージカル映画好きであることを再び確信。
好きな作品に出逢ったときには、なんとも言えず幸福な気持ちになる。

一緒に観にいった人は、海外でも日本でもミュージカルの「オペラ座の怪人」を観たそうだ。
彼曰く、「映画は98%舞台と同じ」。
場面転換、台詞、歌、音楽、そのタイミング、その演出。
映画だからと言ってはしょっているところ、付け足しているところは極めて少ない。
脚本が優れているということだろう。

しかし、映画でしか表現できないこともある。
オペラグラスを通してしか捉えることができない、俳優たちの表情を、映画の中では惜しみなく見ることができるし、効果的なカメラワークで物語をより引き立ててくれる。

ある意味では、ドラマティックな映画一本分に匹敵する演出を、舞台の上に繰り広げる演劇の幅にも驚嘆する。
私はまだ観ていないけれど、舞台の本作もぜひ体験してみたい。

白馬の王子様とオペラ座の怪人。
女性が密かに夢見るものは、些細なバランスでそのいずれにでもなりうるかもしれない。

言い表せないエロチシズムが、荘厳な音楽とエキセントリックな舞台装置に匂い立つ。



オペラ座の怪人 The Phantom of the Opera(2004年・米)
監督:ジョエル・シューマッカー
出演:ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム、パトリック・ウィルソン他
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by yukotto1 | 2005-03-09 21:00 | ぐっとくる映画