生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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Lonely Boy's Life-アバウト・ア・ボーイ-

ちょうど「ブリジット・ジョーンズの日記」の第二作が公開され話題になっているけれど、男性はあの映画をどう観るのだろう。

30過ぎれば、あるいはそれに近づけば、女性と同じように男性も、不安や焦りや切なさや意固地さや、複雑な「大人的感情」に襲われて、思わずブリジットに感情移入したりするのだろうか。

それとも、「負け犬女」を憐れみを持って冷静に観察するばかり?



「ブリジット」男性版。
そんなフレコミで2002年に公開された映画がある。
「ブリジット・ジョーンズの日記」ではイケメンだけどダラシナイ男を演じるヒュー・グラントが、38才独身のダメオトコで主役を張るその作品は、「アバウト・ア・ボーイ」。

私は、この映画、相当好き。

仕事もしていない、結婚もしていない、心優しくもないし、タフでもない。
怠け者で、ひねくれ者で、ただ作曲家だった父親が残したクリスマスソングの印税だけで暮らしている。
そんな自分を恥ずかしいとも思わないし、いつも人を小バカにしている、ウィルはそんな男。

そんな彼がある日、母子家庭に育ったいじめられっ子の少年マーカスに出逢う。
マーカスはウィルになつくようになるが、子ども嫌いのウィルはそんなマーカスをうとましく扱う。
しかしウィルはあるシングル・マザーを好きになり、彼女に話を合わせるために、マーカスを自分の息子のように振舞ったことから、ウィルとマーカスの奇妙な友情が始まる。

ウィルは確かにひどい男で、「実はちょっと優しい」とか「実はそんな彼もちょっと寂しいときがある」とかいうところが、全然ない。
根っからのダメ人間っぷりが、逆に気持ちいいほど。

なんというのだろう、ウィルは、38才にもなって、結局人とうまく関係を作っていくことができない、それから逃げ続けている精神的未成熟な男性なのだ。
ここまで極端な人はそういないとしても、まともに他人と関係を築けない、そういうマインドの足りない人というのはいる。

友達が多くても本音のところでは他人を信用できない人とか、恋人はたくさんいても相手を尊敬できない人とか。
性別の問題とは片付けられないだろうけれど、どちらかというと、そういうタイプの人は男性に多い気がする。経験上。

私の周りには、本当にタフで美しく優しく、魅力的な女性が多い。
その魅力をどこから学ぶのかと言えば、それは決まって、恋愛を中心とした人間関係からだったりする。

もちろん仕事から学ぶことも多い。
男性の多くは、仕事を通じた成長に満足を見出すだろう。(もちろん女性も同じだけれど)
けれど、相対的に人間関係のトラブルに対しては、ただ一言「面倒だ」というので避け続ける男性もいる。
できるだけ「面倒でない関係」を望み、衝突があっても黙ってしまったり、その場から逃げようとすることも多い。(往々にして、女性はそういった事態に腹を立てる)

全てのケースが議論を必要としているわけではないし、ぶつかるばかりでは互いに疲れてしまうことも多いと思うけれど、なんにせよ、そこを経て得るものもある。

最初からうまくやれる人はいなくても、かたちがやがてそれを補完することはよくある。
たとえば、恋人同士が結婚して毎日一緒に暮らしてなじんだ夫婦になっていくように。
あるいは、若いふたりに子どもができて、自然と父や母になっていくように。
成長というものにはいつも、対峙する存在があるものだ。

ただ、この映画のウィルにはそれがない。
恋人ができても長続きしないし、面倒になればすぐ別れてしまう。
まして仕事もしていない。
人と関わることもなく、その必要もなく暮らしている。
それで満足できるほど、彼はダメ人間。

かたや12歳のマーカスは、女手一つで息子を育てる母との対峙の中で、いじめっこたちとの対峙の中で、小さな肩にしょいきれないほどの悩みを抱えながら生きている。
時折自暴自棄になる母のことを心配しては、母を喜ばせるため、彼女が好きな歌「Killing Me Softly」を歌う。
彼の精神年齢は実際よりずっと高い。

そんなふたりが出逢った話。

トーンそのものは軽いコメディなのだけれど、映画を観終わって、胸にじんと残るものは愛にも似た温かさだった。

人はやはり誰しも誰かを必要としていて、関わりもなく生きていけない。
あるいは、人と関わりを持つことは人生をより潤いと安らぎに満ちたものにする。
そのとき何もそれは、恋愛や結婚や出産といったものに付随するばかりでなく、ある意味では、どこからでも始められることかもしれない。

シングル・マザーが親子だけで生きていかなければならないルールもなく、誰かと必ずしも再婚しなければならないルールもなく、ただ心の通じる誰かと互いに必要として支えあえるなら、それが「家族」らしき体をなしていく、それはそれでありだと思う。

血縁や法律のつながりがなくても、きちんと人と対峙することはできる。
そうして人は成長し、人間関係も成長する。
その絆をもしも「家族」と呼んでも、おそらく誰も否定できないほど、自然とかたちは現実を補っていくもののような気がする。


アバウト・ア・ボーイ About A Boy(2002年・米)
監督:ポール・ウェイツ、クレス・ウェイツ
出演:ヒュー・グラント、トニ・コレット、ニコラス・ホルト他
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by yukotto1 | 2005-03-21 01:42 | ハッピーになる映画