生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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趣味の副産物-ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月-


かつては履歴書なんかの趣味欄に、何を書こうか結構迷った。
ありきたりなことを書くのが、なんだか情けない気がするのだ。
「映画鑑賞」とか「音楽鑑賞」とか「テニス」とか。

趣味が「映画鑑賞」と書くんだったら、年間最低100本は映画を観るくらいじゃないとお話にならない。
「音楽鑑賞」と書くんだったら、古今東西の音楽に精通してウンチクが語れなければならない。
「テニス」と書くなら、毎週末はテニスに耽るとか、夜更かししてテニストーナメントの衛星放送を観るとかいうハマり方をしていなければならない。



・・・なんてことはないんだろうけど、私はなんとなく、そういう類のことを趣味として書くことに躊躇してしまう。
確かに、映画も音楽もテニスも好きだけど、それが趣味かと言われるとピンと来ないのだ。
実際、そのいずれのジャンルにも、そんなに詳しいわけじゃないし。

映画については、まあまあ詳しい。
こんなブログを書いているくらいだし。
でも、新作を全部制覇するほど劇場に足を運んでいるわけではないし、古い映画などは必ずしもたくさん観ているわけではない。
実に中途半端だと自負している。

そんなわけで、趣味の欄に何も書けないことが長年のコンプレックスだった。
けれど、あるとき、私は素晴らしいものに出逢った。

もう5年くらい前の金曜日、当時住んでいた会社の寮の近くにあるTSUTAYAで、ビデオをカウンターに並べ会員カードを店員さんに差し出すと、彼はそれを機械に通してこう言った。
「ポイントが貯まっていますので、500円の割引券かTSUTAYAシネマハンドブックと交換できますけど、どうしますか?」

店員さんが示した見本は厚さ150mmくらいのA5版の本だった。
パラパラとめくると、各ページに8つずつ新旧の映画紹介がされている。
ぎっしりと、裕に200ページは超えていた。

私は迷うことなく言った。
「TSUTAYAシネマハンドブックください」

自宅に帰ってめくると、こんなに楽しいものはなかった。
約1500タイトルの映画が掲載され、全ての作品に7行ずつの紹介文がついていた。
作品はジャンルごとに分類されて掲載され、後ろには50音順のさくいんと第1回から最近までのアカデミー賞受賞作品が列挙されていた。
ページのところどころにコラムがあって、俳優や作品やクリエーターのこぼれ話が差し挟まれていた。

私はペンを取り出して、約1500タイトルの映画一覧に印をつけ始めた。
「観た映画」のタイトルに印をつけるのだ。

私は、この、「印をつける」という行為が大好きだ。
何らかのリストが印で潰れていくのが、妙に楽しい。

それは、なんのリストでもいい。
「読んだ本」、「行った国」、「知っている英単語」、「降りたことのある駅」、「一枚でも社員の名刺をもっている上場企業」・・・などなど、ほんとに、なんでもいい。

思えば、白地図や塗り絵が好きだ。
オセロとかピクロスのようなゲームも好きだ。
つまり、塗りつぶしていくことが好き。
知らないものを知り、持たないものを手に入れ、白い地図を埋めていく。
そのプロセスそのものが、なぜかとても楽しい。

そして、黒く塗りつぶされた地図に、この上ない満足を感じる。

TSUTAYAシネマハンドブックの約1500タイトルは、おおよそ300ほど塗りつぶされた。
結果、約1200タイトルは空白として残った。

あと、1200タイトル。
これが挑戦に思えた。
それから私は、人並みよりは多いペースで映画を観るようになった。
しかも、目的はTSUTAYAシネマハンドブックというリストを埋めるため。

計画を途中であきらめず遂行するため、途方に暮れないように、本の掲載作品から抽出して、私は「優先的に観るべき映画リスト」を自分で作った。
自らを励ますために、マイルストーンが必要だと思ったのだ。

リストの作成基準は、ハンドブックを見開きして、最低一つは印がつくこと。
つまり、2ページ分の16作品の中で最低一本は観ている必要があり、一本も観ていない場合は、その16作品から一つ選んで(最も興味を惹かれる作品)、「優先的に観るべきリスト」に加えるのだ。

ハンドブックの並びは映画ジャンルごとになっており、ドラマやコメディでは1ページにいくつも印がついたけれど、戦争モノや歴史モノのページは一つも印がつかないことも多かった。
だから、まんべんなく印をつけていくためには、私が今までほとんど観てこなかったジャンルの映画を観ていく必要もあるのだ。

同時に私は専用のノートを作り、自分が今まで観た映画を全て書き出すことにした。
シネマハンドブックの助けを借りて、書き連ねた作品の数は当初、350ほどだった。
25年ほどの人生で350本である。

それから5年近く経ったはずだけど、そのノートには650の作品名が書かれている。
5年で300本ほど観た。
最初に作った「優先的に観るべき映画リスト」は制覇され、「優先的に観るべきリスト2」を作成した。
今度は、見開き1ページから、片側1ページに1作品のルールに変更した。
つまり8作品に最低1本、のルール。
そのリストも、もうまもなく終わる。

私のTSUTAYAシネマハンドブックに対する愛は限りなく、これは毎年改訂版が出るのだけど、それを手にするや、私はもくもくとチェックを入れなおす。
改定されると掲載される映画が2割ほど入れ替わってしまうというのが、これまたchallenging。

悩みどころは、シネマハンドブックは非売品のため、簡単に手に入れることができない。
東京に引っ越してから近所にTSUTAYAがないので、ポイントが貯まることはなく、どうにかしてそれを手に入れようと奔走することになる。

かつて、偶然に知り合ったカルチャーコンビニエンスクラブ(TSUTAYAを経営する会社)の社員の方に、いかに私がシネマハンドブックファンであるかを切々と語り、そこまで言うならと後日、郵送で最新版を送ってもらったことがある。
また、デートしていた人(TSUTAYAとは無関係)にファンであることを話したところ、次に会ったとき、彼がそれを手に入れてプレゼントしてくれたことがある。
そのときは本当に本当に嬉しくて、それをきっかけに彼に対しての私の見方が大きく変わり、彼を好きになってしまったくらいだ。

この話をすると、ある年下の女性などは「初対面の人にそんな話、絶対しちゃいけませんよ」なんて言う。
それくらい、私の趣味が奇妙に思えるようだ。
確かに少し病的な感覚かもしれない。
なので私も、ちょっとこの話をするのは躊躇する。
でも、別に誰にも迷惑をかけていないし、無邪気な遊びの感覚なのだから、どうか大目に見て欲しい。

そうやって映画を観続けていると、それなりに詳しくなるもので、同時に「観る目」みたいなものも養われてくる。
役者だけでなくクリエーターについての知識もつくし、何かの作品が別の作品のオマージュであることなどにも気づく。
時代やお国柄といったものによる流行、パターン、スタイル、思想にも精通し、各種の表現の効果などについての考察も深まる。
音楽の使われ方や台詞まわし、カメラワーク、カット割などを観察する余裕も生まれる。

そして、どうやら、周りの人からも「yukottoは映画に詳しい人」と認識されるようになり、誰もが私の趣味を「映画鑑賞」だと思うようになる。
こうなれば、趣味の欄に、「映画鑑賞」と書いても許されるかもしれない。

でも、正直言って、そうじゃない。
私の趣味は、あくまでも「リストを作ること。それをつぶすこと」。
間違いなくそれは私の趣味だけれど、映画は私の趣味じゃなく、「大好きなもの」ではあれ、あるいはちょっとした副産物である。

副産物といえば、ちょっと嬉しいのは、最近一緒に映画を観た人が皆、とてもいいセレクトだった、と言ってくれたこと。

前にも記事に書いたけれど、私はその日、映画をともにする人の雰囲気、性格、その人との関係性なんかをふまえて何を観るかを決める。
誰と何を観るか、これは大事なこと。

「オペラ座の怪人」を観た人は、サントラをくれたし(彼以上に私があの映画を気に入っていたからというのもあるだろうけど)、「誰も知らない」を一緒に観た人から今日、「最近、時折、あの映画のシーンを思い出すよ。ナイスチョイス」とメールをもらった。
それから、きのう、「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうな私の12ヶ月」を観た人からは、映画館を出るとき、レニー・ゼルヴィガーがとても魅力的であったこと、久しぶりにいっぱい笑う面白い映画だったこと、満足だとお褒めをいただいた。

別に私が作った映画じゃないけど、そんなふうに観た映画の感想を聞くとちょっと嬉しい。

きのうは映画の後、銀座のワインバーに行ったけれど、「こんな感じのワイン」と伝えれば、店の人があれこれと見繕っておすすめを示してくれた。
たとえばそんなふうに、私の少し変わった趣味にも、悪くない副産物がある。

ともあれ、「ブリジット・ジョーンズ」の新作はとても面白かった。


ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月 BRIDGET JONE'S DIARY THE EDGE OF REASON(2004年・米)
監督:ビーバン・キドロン
出演:レニー・ゼルウィガー 、コリン・ファース 、ヒュー・グラント他


ブリジット・ジョーンズの日記 BRIDGET JONE'S DIARY(2001年・米/英)
監督:シャロン・マグアイア
出演:レニー・ゼルウィガー 、コリン・ファース 、ヒュー・グラント他
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by yukotto1 | 2005-04-04 02:13 | 笑える映画