生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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美術館に行った日-トーマス・クラウン・アフェア-

美術館は、好きな場所のひとつだけれど、東京ではなかなか足を運ぶことがない。
なぜという特段の理由はないけれど、いつでも行けるという思いがあるからか、週末の過ごし方に「美術館に行く」という予定が入ることは滅多にない。

けれど、昨日は、国立東京近代美術館に足を運んだ。
「ゴッホを観にいこう」と誘われたから。



その美術館は竹橋にあるが、東京駅から無料バスが出る。
友人は大手町に勤めているので、毎日、そのバスの行方と駅構内の黄色いポスターを目にしては気になっていたようだ。

片道15分で往復する満員のバスに乗り、美術館の入口に着けば、長蛇の列。
最後尾に掲げられたプラカードには、「ただいま60分待ち」と示されていた。

3年ほど前、パリのオルセー美術館に入るのに、2時間半ならんだことを思い出す。
随分待って入ったのに、ちょうど大晦日だったために普段より閉館時間が1時間早く、半分くらいしかフロアを見てまわれなかった。

国内の美術館で、こんな行列ができているのを見たのは初めてだった。
ゴッホは人気あるんだな。

正直、予想外の混雑だったので思案した。
時刻はもうじき15時で、閉館時間まであと2時間しかない。
しかもこの人だかりでは、中も相当混んでいるだろう。

美術館をベルトコンベアに乗るみたいに、一定速度でまわるなんてまっぴら。
しかも閉館残り1時間では、それぞれの作品をちらっと視線に入れたくらいで終わってしまうだろう。

そう思っていると友人が、隣の工芸館で人間国宝の工芸品展示がやっているよと言うので、そちらにしようという話になった。
ゴッホとは全然違うけど、ゆっくり見てまわれた方が満足度は高いだろう。
ゴッホ展は5月の下旬までやっているので、来たいならまた来ればいい。

工芸館の建物は、東京駅と同じような明治特有の赤レンガ造りで、全体の大きさの割に小さくてキィときしむ扉や、低い天井と薄暗さがある。
小学校の旧校舎みたいだ。
それくらいこじんまりとしていた。
入館料はたった200円で、それなりに鑑賞者はいたけれど、決して混んではいなかった。

ガラスケースの工芸品。
テーマは「人間国宝の花」だけに、花をモチーフにした作品ばかりで、なんとなくかわいらしい。

日本のデザインはシンプルで、かつ華やかさを携えている。
なめらかな曲線には、無駄がない、迷いがない。

「迷いがない」というのは、それだけで大きな憧れに思え、ゆっくりと息を吐く。
そう、良いものには迷いがないのだ。
だから潔い稜線と、精神力の賜物に相違ない精緻さがある。

芸術とは、信念だと思う。
一思いにやり遂げる、信念。

まだらのない朱色は、本当に強い信念がなければ発色しない。

高校時代、「英文問題精講」という英語の問題集に「良い文章における言葉はピラミッドの石と同じ。それを動かすことは至極難しい」という例文があった。
記憶が定かでないけれど、バーナード・ショウか誰かの言葉だったと思う。

その文と出逢ってからは、ある一要素を他のものに変えていたら、この作品は成立しえただろうか、という視点でものを観察することがある。
文章だけでなく、映画や絵画や音楽やあらゆる芸術作品にあてはまることで、そこに黄金律のような必然性が見えたとき、それは間違いなく「美」であると感じるのだ。

それもまた、迷いのない精神のなせるわざ。迫力。

ミステリアスな神の作業のよう。

美術館を舞台にした映画として、「トーマス・クラウン・アフェア」は爽快でダイナミックで面白い。
大富豪トーマス・クラウンが、ニューヨークのメトロポリタン美術館から鮮やかにモネを盗み出す。

トーマス・クラウンは007シリーズのピアース・ブロスナンで色気たっぷり。
盗みの天才であり、やり手の実業家であり、ハンサムでお金持ち。
ユーモアに溢れ、オシャレで小粋。もちろん女性にもてる。
見ていてウキウキする「古典的な」タイプのクライム・ムービーで、クライマックスは、思わず膝を打つ爽快感。

華麗な犯罪には、入念な下見と計画が必要だ。
トーマス・クラウンは毎朝仕事の前に美術館を訪れるのを日課にしている。

日本でも、もう少し、美術館が身近な場所であるといいと思う。


トーマス・クラウン・アフェア The Thomas Crown Affair(1999年・米)
監督:ジョン・マクティアナン
出演:ピアース・ブロスナン、レネ・ルッソ、デニス・レアリー他
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by yukotto1 | 2005-04-17 19:15 | ノリノリの映画