生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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三つ子の魂-シカゴ-

久しぶりに会った両親に、旅行の間じゅう、「太った」と言われ続けた。
口の悪い親なので、滅多に、いや、原則的に娘を褒めることがない。
私を褒めるときと言ったら、何か企みのあるときだけだ。

確かに、私はここ数年で太った。
年齢のせいというのもあるだろうし、東京に来てからの外食がちな生活というのもあるだろう。
それは自分でもよく分かっている。

とはいえ、両親がよく記憶している、かつての私は、本当に痩せっぽっちだったのだ。
小学生のときなど、太ももに肉が全くなく、短パンを履いてもスカスカだった。
友だちと並んで座ると、腰掛けて押されるように横に広がった友だちの太ももを、座ろうが立とうが変化のないマッチ棒のような私の太ももと見比べて、うらやましいとさえ思ったものだ。



特に子供の頃は、年がら年中日焼けして真っ黒だったので、人並より大きな目や耳の目立つ、妙ちくりんな黒んぼ少女だったに違いない。

高校生のときには、献血をしようとしたら、保健士さんに「採血して大丈夫?」と心配されるほどか細く、大学生のときには体重が少なすぎて保健センターに呼び出され健康状態に異常はないかと問いただされたくらいだった。
実際には、血を少々採られようが貧血には無縁だったし、ほとんど医者いらずの健康体だったのだけれど。

20代前半までは、自慢じゃないが、時折人を感嘆させるほど脚もウエストも細かった。
ジーンズを履いて買い物に行ったら、店員さんに「ジーンズのCMみたいですね!」と試着したジャケットじゃなくジーンズを褒められたことがある。
わりと体にぴったりとしたワンピースを着ていると、後輩の女の子が背後から、「yukottoさん、なんですかそのウエストは!」と驚いたように駆け寄ってきた。

まあ、それもこれも、今は昔。
いくらかつてのことを懐かしんでみても詮無いこと。

確かに私は、ここ数年で太った。
二の腕とか、腰まわりとか、自分でもがっかりする。

そんなわけで、親がうるさいからではないのだけれど、ちょっと真剣にダイエットを試みてみようか、なんて気持ちになっている。(まだ気持ちになっているだけだけど)
実はダイエットってやったことがない、生まれてこの方。
胸を張って私は若いと言えた頃は、食べても食べても太らなかったのだ。

私は、正真正銘の大食い。そして、うっかりすると、とんでもなく早食い。
そのペースが年をとっても変わらないのが食べ過ぎの最大の原因。

それにしても、小柄な私がこんなに食べるようになったのは、それなりの理由がある。
それはある意味、ちょっと、歴史とも言える。

遡ること四半世紀。
私が通っていた保育園は、おかずだけ給食が出て、ごはんを持参するというシステムだった。
お弁当箱にめいめいに、子どもは白いごはんを入れてくる。

むかしのお弁当箱は、アルマイト製。
軽い金属の楕円形の缶カン箱。
冬場などは、その缶カンを教室の真ん中にあった巨大なストーブを取り囲む柵に、巾着袋のままぶらさげて、中のごはんをささやかに温める。

男の子のお弁当箱にはゴレンジャーや仮面ライダー、女の子のお弁当箱には、リカちゃん人形やキャンディキャンディの写真やイラストがプリントされているものが人気だった。
ディズニーやキティちゃんではない。
いかにも70年代生まれの子どものセンスらしい。

ちなみに、当時の子どもの9割方が履いていた靴は、スーパーのレジの横のところに台紙とプラスチックのカバーだけでパッケージされて引っかけられている、ビニール製のズックで、男の子はブルー、女の子はピンク、そしてもちろん日本製キャラクターのイラスト付だった。
今もそういうのが売っているのを見かけるが、履いている子はあまり見ない。
親がオシャレになって、子どもにそんなものを履かせないようになったのか、それとも東京の子は昔からそうだったのか、それはよく分からないけれど。

私は、自分のお弁当箱が嫌いだった。
なぜなら、私のお弁当箱のフタに載っていたのはリカちゃんじゃなく、アメリカちっくなヒヨコのイラストだったのだ。
そのヒヨコは銀色のアルマイトの表面で、目を閉じてZZZ・・・と寝息を立てていた。

今、振り返れば、それはワーナーブラザーズのキャラクター、トゥイーティーだったのだけれど、当時の私はそんなもの知らない。
今でこそ結構センスのあるデザインだったと思うのだけれど、若干5歳児には、この、男の子のものとも、女の子のものとも見えないデザインが、とにかく気に入らなかった。
なんだ、この禿げた黄色い鳥は!といった気分で母親の選択を恨み、他の女の子たちのリカちゃんを羨望のまなざしで見つめたものだ。

しかし問題は、お弁当箱ではない。

その頃、私は、食べるのがとても遅かった。
クラスでも食べ終わるのが一番遅くて、みんなが昼休みで外に遊びに出たり、教室の後ろでままごと遊びを始めても、のろのろとずっと食べていた。

嫌いな青ネギがいっぱい入っていたとか、温めたミルクが嫌いだったとか、食べるのを遅くする理由は様々あったけれど、それでもみんなより何十分も遅くなった。
土曜日は半日なので昼食の後すぐ下校なのだけれど、門の外にひいおばあちゃんがお迎えに来ても、私は延々食べ続けていた。
次々とみんなが帰っていく教室での昼食は、とても寂しい。

そんな私を、両親も保育園の先生も憂慮した。
「もっとはよ食べへんかったら、小学校行ったら困るで」
大人たちは、口々に私にプレッシャーを与えた。

小学校では、給食の後、掃除のために机を後ろに送る。
そう聞いて、私は一人掃除中に取り残されて物を食べ続ける自分を想像し、ひたすら焦り、必死だった。

「早く給食を食べたい」
当時の私にとって、越えなければならない大きな目標だった。

私は努力した。
けれど、結局、最後まで私の最下位ぶりは変わらなかった。

そうして、不安を抱えたまま小学生活はスタートすることになった。
私は最大限一生懸命、給食を食べた。

そうすると、不思議なことに、クラスで一番に食べ終わる。
最下位だった私が、とたんに早食いになる。
男の子より、誰よりも早い。

「食べるの早いねえ!」と先生はなぜか褒めてくれる。
「僕のが早かった!」と対抗意識を燃やす男の子がいたりする。
私は一躍、給食の時間における筆頭者の一角になった。

それがなぜだったか。

小学校の給食は、おかずだけではなくご飯も出る。
火曜と木曜にはパンが出る。

ここにキーがあった。

気がついたのだ。
私が保育園の頃使っていたアルマイトのお弁当箱には、めいっぱい白いごはんが入っていた。
生意気なヒヨコが昼寝するフタを開けると、登園途中に傾いた都合で若干隙間が空いているものの、ほぼぎっしりと白く輝くお米が詰まっていたのだ。
考えてみれば、他の子どもたちの、仮面ライダーやリカちゃんの内側には、確か、お弁当箱の半分ほどのご飯が入っていただけだった。

それはそうだ。
お弁当というのは通常、ごはんとおかずで構成される。
保育園ではおかずは別に出るのだから、ごはんはお弁当箱の半分以下でいいはず。

つまり私は、保育園に通った2年間、来る日来る日も、普通の子どもの2倍の米飯を食べていたことになる。

子供用とは言え、お弁当箱いっぱいとなると、大人が使うお茶碗の1.5杯分くらいはありそうで、わずか5歳の子どもにその量はどう考えても多すぎる。

私はそれでも、毎日、毎日食べていた。
必死になって。一生懸命。

そんなわけで、早食いで大食いの私が生まれたのだ。
いわば、全て、あのおっちょこちょいの母親のせい。
子どもには多すぎる、なんて考えなかったんだろうか、あの人は。
それがたとえ大人向けのものだとしても、お弁当箱いっぱいに米飯をよそうなんて、日の丸弁当じゃあるまいし。
一度たりとも、梅干が入っているなんていう気の利いた演出はなかったけれど。

はっきり言って、私に「太った」なんて言う資格、お母さん、あなたにはないですから!

今日の映画として「シカゴ」を選んだのは、私のダイエットに賭ける希望を示している。
最近電撃結婚したレニー・ゼルウィガーの脚線美。

ミュージカル映画としては、最高峰の一つとも言えると思う「シカゴ」において、彼女は可憐で打算的でたくましい駆け出し女優の役を演じる。
「ブリジット・ジョーンズの日記」ではだらしなく可笑しくかわいい負け犬の女。
そこから体重を10kg以上落として挑んだ本作では、キャサリン・ゼタ・ジョーンズと並んでも全く引けをとらない見事なスタイルを見せつけてくれる。

そしてまた、「ブリジット」続編では体重増加。
撮影後には、みるみるダウンサイズ。

急激な体重の増減は決して体に良くないけれど、レニー曰く、普通にしているとすぐ痩せてしまうので「ブリジット」撮影中は痩せないように食べ続けた、とのこと。
おそらく彼女は、通常の生活の中でも十分な活動消費をしているのだと思う。

生活習慣、それが最大の鍵ならば、できることから少しずつ、気をつけていきたい・・・と母を恨みつつ思うのだ。

大げさに言えば、幼い頃からの大食い習慣、「三つ子の魂」への挑戦とも言える。



シカゴ CICAGO(2002年・米)
監督:ロブ・マーシャル
出演:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、レニー・ゼルウィガー、リチャード・ギア
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by yukotto1 | 2005-05-14 02:20 | ぐっとくる映画