生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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嫉妬するほどいい女-黒革の手帖-


私が観るテレビ番組と言ったら、毎朝の「めざましテレビ」か映画の地上波放送くらいなもので、連続ドラマの類といったら全く観ることがない。
当然その時間に自宅にいないからというのが最大の理由なのだけれど、この間、たまたまその夜、家にいて特番ドラマを観た。

「黒革の手帖」。
松本清張原作のサスペンス系ドラマ。
サスペンスといっても、殺人事件が起こるのではなく、主人公である銀座のホステス元子が大物政治家や実業家の男たちを手玉にとり、陥れながら、大金をせしめてのし上がっていく物語で、昨年の秋、テレビ放映されて好評を博したのだそうだ。



私は一度も観たことがなかったのだけれど、人が「黒革の手帖ってさ~」と会話するのは何度も耳にしたことがある。
随分面白そうなのだな、とだけ興味はあった。

主演は、米倉涼子。
見事な女っぷり、力強さとしたたかさ、色気と機転で生き抜く銀座の女。

でも、いくら銀座のホステスでも、こんな女性いないだろう・・・

・・・って、私の近くにいる。
この、元子を彷彿とさせるような、見上げた女性がいる。

ドラマを観ながら、彼女のことをずっと投影していた。

まず、彼女はとてつもなく美人。
都内のホテルのロビーで初めて彼女に会ったとき、思わず言葉を失うほどだった。
まさかあんな綺麗な人が、私の会社と大学の後輩であろうとは、全く思い描けなかった。
本当に、人並みはずれて美しい人なのだ。

おそらく、彼女の美しさは顔立ちのせいばかりではない。
陶器のように白くなめらかな肌や、豊かな黒髪や、吸い込まれそうというよりは凍りついてしまいそうなクールなまなざしや、そういった構成要素の完璧さはもちろんのこと、その佇まい、堂々とした姿勢や身のこなし、センスの良いファッションにも大いに拠るだろう。

米倉涼子になんとなく似ている。
米倉涼子よりもずっと色気があるけれど。

ひとたび口を開けば、歯に絹着せぬ物言いが小気味もよいし、人の注目を集める。
なんというか、華のある人なのだ。

性格は実は体育会系のノリで、非常に気が利いて上を立てる。
マメに人付き合いをフォローし、上にかわいがられ、下に頼られる。
さばけていてポジティブで、少し怖いほどにタフだ。
彼女は、絶対に弱点を見せない。

自らを「ラブハンター」と称する彼女は、とてももてるし、実際恋も多い。
彼女が恋愛の場でしおらしいところを見せるのかどうかは疑わしいのだけれど、傍目に見る限りは決して下手に出ない、常に彼女が上位に立つ関係のように見える。
彼女ほどの女性を相手にして、男性たちも平常心を保つのは困難なのかもしれない。

気がつくと、いつも新しい恋をしている彼女なのだけれど、「私は真実の愛を求めてるんですよ」といたずらな笑みを見せる。
でも、結婚には興味がないと公言して憚らない。

彼女は、自分の力で生きていくとどこか誓っているようにさえ見える。
まさに、「黒革の手帖」の元子のようだ。

そんな彼女が、ハーバードのビジネススクールに行くと聞いたのは3月ごろだったか。
いつの間にそんな勉強をしていたのか知らないのだけれど、こっそり彼女は受験勉強をして、鮮やかに世界最難関とも言えるようなハードルを越えてしまった。

しかも彼女は、自費で留学する。
1000万近い借金をして、会社の手も借りず、身銭で渡米するのだ。

その上、会社は自費留学に対する休職を認めていないため、彼女もルールに従えば退職しなければならないはずだったものを、なんと例外的に会社に休職を認めさせたのだ。
いくら人事に言ってもとりあうことなく、無理なら辞めざるを得ない、と言っていたのが、最終的には特別待遇を勝ち得た。

それは実は、元々役員に近しい種類の仕事をしていたこともあり、彼女持ち前のネットワークと人心掌握術で社内の役員連中とミツにしてきた関係が効を奏し、役員自ら彼女をサポートする働きかけがあったのだと言う。
ルールさえもものともしない。
むしろ、それを超越したところでルールを味方につけるような人。

そして、MBAをとってまで、その費用も出してくれない、現在の会社(私にとっては以前勤めた会社)に戻ると宣言する。
いくらでも、卒業後の彼女のために高い年俸を払う企業はあるはずなのに。

「だって、私、会社が好きですから」

本当に、見上げた、見上げた女性だ。
また私は彼女に対して言葉を失う。

彼女は今週末、アメリカへ旅立つ。
週末、その送別会に出向き、彼女にささやかなはなむけをした。
私じゃ似合わないけど、彼女がつければとても映える大ぶりのターコイズのピアス。

年下ながら、彼女に会うたび、私は背筋が伸びる思いがする。
嫉妬するほどいい女で、こういう女性の先輩などという立場にあれるのは、全く光栄というか気恥ずかしい。
彼女は、そんな私でさえ「憧れの先輩ですから」なんて立ててくれるのだ。(ありがとう)

「ブラピみたいな日本人をつかまえます」という謎の誓いを新たに、ラブハンターは海を渡る。
たぶん、彼女ならなんでも手に入れてしまうんじゃないかと、頼もしく、そしてちょっと同じ女として焦りなんかも感じたりする。


黒革の手帖(2004年・日)
原作:松本清張
出演:米倉涼子、仲村トオル、釈由美子他
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by yukotto1 | 2005-07-12 01:49 | 怖い映画