生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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ビールの飲み方と開き直り-フルフロンタル-

プロモーション・ディナーとかいって、昇進のお祝いに東京オフィスのトップとディナー。
同じランクに昇進した人が何人いたのか知らないのだけれど、先日は私ともう1人と、それからVP(ヴァイス・プレジデント)2人の全員で4人のディナーだった。

西麻布の「Segreto」。
京野菜を使ったあっさりとしたイタリアンで、洗練された店の内装もあいまり、ぐっと大人の雰囲気。



デザートに差しかかる頃、「私の値段」という、ありがたくも耳の痛いお言葉をいただく。
予想はしていたけれど。
つまり、「お客様からいただいている自分の値段を考えて、本当にその価値のある仕事をしているか考えなさい」という話。

はい、わかってます。わかってますって。

VPといったって、実際の仕事で関わることはほとんどない。
いわゆる部署も上司部下の関係も存在しないうちの会社では、「ランク」という名の値札がそれぞれについていて、私らはごっそり無造作に八百屋の店先にでも並んでいる。

値段が高すぎれば、それに見合う価値がなければ売れ残る。
売れ残って腐って枯れる。
みずぼらしい、しなびた大根。

それを考えると身震いする。

昇進したからってバラ色ばかりじゃない。
むしろ、プレッシャーはきつくなって、首の皮がよっぽど薄くなる。
正直、思わず逃げたくなる。

その夜は、思い切って訊いてみた。

「自信をもってマネージャーになるには、一体何をクリアすればいいんですか?」と。

私はまだマネージャーではないのだけれど、それが視野に入ってくると当然そこへ近づく準備を期待される。
もう1年くらい前から意識だけはしているけれど、自分には適性がないんじゃないかと不安になることの方が断然多い。

みんなそうなんですか?
最初からできる人とできない人がいるんですか?
それとも、一定の何かを越えたとき、マネージャーとして自信をもてるようになるのですか?

日本に全部あわせたって100人といるわけではない現役のトップコンサルタント(のはず)であるVPへの質問。
彼らも日本の大企業に勤め、その後私と同じようなランクからスタートした経歴を持つ。

それに対する答え。

「とにかくやってみるしかないよね。やっていって自信がつくんだよ」

・・・・・・・・・・・・・・・たぶん、そんなことだろうと思った。

「でも、責任ってあるじゃないですか。
私はよくても、やっぱりお客さんに対して、失敗をするわけにはいかないって思ったりもするんですけど」

VPのNさんは「うーん、そうだねえ」と大きくうなづいてから言った。

「今なら本当のマネージャーじゃないんだし、最終的には本物のマネージャーやプリンシパルやVPが責任をとってくれるよ。
骨は拾ってくれるっていうか」

うーん、これも想定していた答え。

Nさんは、マネージャー時代に3回replacementを受けたことがあるらしい。
replacementとはクライアントから「他の人に代えてくれ」と言われること。
コンサルタントにとっては最悪の事態で、あってはならないこと。
もし私だったら、ショックで引きこもるかもしれない(ウソ?)

そういう経験を経てここまで来たんだよ、ということなのだと思うのだけれど、それはそれで大変心強い気もし、反面Nさんはラッキーなのだなあと思ったりもする。
あるいは、それでもなお生き延びるだけの力のある方だということか。

冷静に考えてみて、私のいる環境がそういった事態を許してくれるものかというと、どうもそうは思えない。
もしかすると、もっと理不尽なことで、一寸先の闇に落ちることがありそうにさえ思える。

「フルフロンタル」という映画がある。
複数の登場人物のある一日をそれぞれの視点で切り取っていく群像劇なのだけれど、その登場人物の一人、雑誌社に勤めるカールは、ある日上司に呼び出されて、こう尋ねられる。

「君はビールをグラスに注いで飲むかね?それともボトルのまま飲むかね?」

カールは少し考えて言う。
「グラスに注いで飲みます」

上司は「あー、やっぱり」という顔をして額を打ち、カールに向かってこう告げるのだ。
「僕らが求めているのは、ビールをボトルのまま飲む感性なんだよね。
つまり、君は僕らの求める感性には合っていない、ってことだ」

そして、カールはクビ。
たぶん彼の答えが逆でも結果は同じだったと思うけれど。

それは極端だと思うけれど、でも、なんとなく、人生にはそれくらい理不尽なことがあってもおかしくないんじゃないかと思う。
少なくともそういう覚悟が必要な気がする。

でも、まあ、そんな理不尽さを案じても仕方がない。
理不尽というのは、その発生タイミングも状況そのものも理不尽であるからにして理不尽なのだから、それに惑わされても何の得にもならない。

ただ、どんな理不尽があっても、受け止めて立ち直る柔軟さが必要。
失敗は誰にもである。
もしかしたら自分のせいじゃない失敗もある。

どこへいっても、なにをやっても、きっと大丈夫。
たぶんこれまでやってきたことも、これからやることも、確実に成功するためなんじゃなく、失敗しても凹たれないためのバッファーつくりなんじゃないかと思う。
失敗しても凹たれさえしなければ、チャンレンジを恐れる必要はないのだから。

大丈夫。

幸い、周りの人が「一応」フォローしてくれるって言ってくれているのだから、あるいは、フォローしてくれなかったときは「フォローしてくれなかった!」って怒ってもいいくらいの立場にはあるのだから、だからまあ、懐を借りて、じゃんじゃんやっていきましょう。

自分の不器用さに辟易とすることも茶飯事だけれど。
でも。

ビールの飲み方くらい、好きにするわ。


フルフロンタル FULL FRONTAL(2003年・米)
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ジュリア・ロバーツ、デヴィッド・ドゥカヴニー、キャサリン・キーナー他
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by yukotto1 | 2005-07-18 17:20 | アートな映画