生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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布団を買う-薔薇の眠り-


羽毛布団を買うことにした。

というのは昨晩、どうやら風邪らしい症状が出て、体が氷に浮いたみたいに凍えて眠るに眠れなかったからだ。
毛布の感触が役に立たない。

今朝はひどい頭痛で、体もだるくてしばらく動けなかった。
昼に病院に行ったら、「熱はないですね。でもたぶん風邪でしょう」という素人の私でもできる診断をされて、医者という職業への不信感を募らせる。

今度生まれ変わったら、こういう仕事についてやる。



これまで特段布団について考えたことがなかったし、真冬でも今使っている布団で寒い思いをしたことはなかったのだけれど、ちょっと最近、身近な人からもっとあったかい布団を使うべきだという指摘を受け、ちょうど考え直していたところだった。

そして、この季節、北風の入り口。

今使っている布団は実家から持ってきたものだから、使用歴は10年を超えるだろう。
長く使うと中綿が減ると聞いたこともあるので、それなりの寿命なのかもしれない。
よく分からないけど。

それで、羽毛布団。

多くの独身諸氏と同じく、私も布団について詳しくない。
足りない知識で思いつくのは、「高級布団=羽毛布団」という稚拙な等号式だけだ。
それ以上の詮索をすることもなく、「先人の教えに従えばよいのだろう」と安直に結論を出す。
「寝る」という全哺乳類共通の所作への処方箋に、私などがわずかばかりに抵抗を示して歯が立つわけがない。
素直に長いものに巻かれてしまうのがよい。

ブランド・エクイティとは、まさにこういうことである。
「羽毛布団」界が有史以来築き上げてきたものは偉大だ。

そして私は、googleで「羽毛布団」と検索する。

出るわ出るわ、752,000件。

どうやら「西川の羽毛布団」というのが、この世界における権威らしい。
布団ごときといっては失礼だが、その布団ごときに「ついに西川の布団を買った!」などと並々ならぬ興奮を見出している人がいる。

確かに価格は10万円近く、私にとってみれば、興奮を通り越して驚愕である。

布団に10万。ありえない。
10万あったら、強羅花壇の貴賓室の布団にもぐる。(それもそれだが)

正直、どれを選べばいいか分からないので、楽天の売れ筋ランキングを頼りにしてみる。
一位の品はツインキルトロイヤルゴールドラベル付羽毛布団シングルサイズ、価格24,800円。

うーん、わからない。
どの布団に関する説明を見てみても、無意味に仰々しい名前と「あったかい」「ぐっすり眠れる」「最高級」という言葉が踊っていて、その差は全くわからない。

産地や製法に違いがあるようだけれども、だからその結果どうなのかが不明なのだ。
でも、休日にわざわざ布団を買いに出かける気もないので、「まあいいや、これで」と一位の「ツインキルトロイヤルゴールドラベル付羽毛布団」を1枚、ボヤッキー気分で「ポチットナ」とボタンを押す。

さくさくとワンタッチの連続で手続きは進み、週末には暖かい羽毛布団が我が家に届く手はずが整った。
ネット通販って、結構好き。

安眠は健やかな生活にとって重要な要素だ。
夢を見ると寝つきが悪いと言うが、それでも心地よい布団の中でなら、心地よい夢が見られるような気もする。

映画「薔薇の眠り」では、主人公の女性は眠りにつくたび、もうひとつの人生をそこで経験する。
寝つく前は南仏の主婦、夢の中ではニューヨークのキャリアウーマン。
各々の人生が睡眠の間に紡がれ、そこで生活をし、仕事をし、恋さえもする。

幼いころ、いや、今でもそういう要素はあるが、夢の続きが見たくて無理やり眠ろうとすることがあった。
けれどそれを望んでも、たいてい続きの夢は見られない。
夢の中で一度きり逢った理想の男性に、もう二度と逢うことはできない。

それが夢というもの。

しかし、この映画の主人公はむしろ悩ましい気持ちで夢の続きを見る。
どちらの側の人生も、決して不幸ではないが、なぜ別の人生をそんなふうに送らなければならないのか、自分でも理解できない。

別人の人生。
でも、どちらがわたし?

そういう想像力の中で、今の私が現実じゃないとしたら、これは誰かの夢だとしたら。

あたたかい羽毛布団に包まれる夢を、布団を待ち望む夢に見る。
入れ子のように、夢に見る。

目覚めたときには、誰がいる?



薔薇の眠り Passion of Mind(2000年・米)
監督:アラン・ベルリネール
出演:デミ・ムーア、ステラン・スカルスゲールド、ウィリアム・フィッチナー他
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by yukotto1 | 2005-12-06 23:50 | しっとりする映画