生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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隣国の事情、友人の想い-シュリ-


先月、韓流スターのウォンビンが兵役のため入隊したというニュースが報じられた。
個人的な趣味では、韓国四天王の中で一番好きなウォンビン。
あんな男前でも兵役を拒否できない、厳しいサダメだ。

友人の韓国人L君は、日本に留学していた折、この兵役のサダメについて、憂鬱そうに触れていた。
健康な韓国人男性は、18歳になればいずれ2年2ヶ月の兵役義務を果たさなければならない。
つまり、仕事や学問や恋愛やスポーツや、人生のうちで最もやるべきことが多くて、成長と歓びに溢れた20代の貴重な二年間を、お国のために捧げなければならない。



兵役に行ったある人は、韓国男子たるもの皆それを経験すべきだと言う。
肉体的にも精神的にも鍛えられて強くなれる。
だから、お前も行くべきだ。

けれど、L君が特に恐れていたのは、軍隊の訓練を通じた精神教育的なものでもあった。
愛国心はまだしも、理不尽なルールの受容や封建的思想、そして何より「人殺しの術」を学ぶ経験が役に立つとは認めたくなかった。

とはいえ、L君は真っ向から否定も肯定もできない。
それは、とてもセンシティブなこと。

彼は大学時代、そういった気持ちを日本語で綴って自身のHPに公開したところ、日本の新聞社から新聞に掲載したいと依頼された。
私たちが大学2年生だった2000年頃のことだ。

彼はこう綴っている。

「私は、多分2,3年以内に軍隊に行くだろう。軍隊とは何かも全くわからない日本人の友達に見送られつつ、私は日本を離れ、髪を短く切るだろう。入隊式で友人、家族に見守られつつ韓国人としての義務を果たすであろう」

そして、L君は今、兵役期間中である。
日本に6年間の留学、それからアメリカに2年。
36歳まで留学を続ければ兵役を免除されるという例外に頼るという術もあったけれど、彼は遂に観念したのだ。
「お国の務め」を果たすことは、彼が韓国人として母国で生きていくためにどうしても必要なことだった。

ただし、優秀な学歴を評価され、彼は一般の兵士としてではなく、兵士たちに経済学を教える士官として入隊することになった。
このことで、入隊期間は3年と通常より長くなったが、いわゆる軍事訓練は最初の数ヶ月だけで済んだし、人並みの給料を得て、家族と住むことを許された。
彼はこの3年のうちに、結婚して子どもまで授かったのだから、一般の兵役とは雲泥の差の生活だと言える。

2年前、ソウルで開かれたL君の結婚式に出席したが、そこには彼の教え子である兵士たちがたくさん訪れていた。
揃って軍服を着ているのでよく分かる。

「彼らの収入はゼロで、お小遣いも何もないんだよ。
自分で好きな菓子を買うこともできない。
そのかわり、どこへ行っても公共機関の利用料が無料だったりするんだけどね。
今日はたくさん食べて帰ってもらわないと」

そう言ってL君は、若い兵士たちにご馳走を振舞うのだ。

何かの事態があれば、彼らは戦場に行く。
人を殺しに戦場に行く。
教え子たちのことを思うと心が痛いと、L君は言った。

韓国は日本に近い国だ。
束の間のフライトで週末旅行ができる。
このごろは空前の韓流ブームで、こぞって皆が韓国文化を享受して、わずか数年でさらに身近な国になった。

韓流映画が日本で人気を得るようになった、おそらく最初の作品といえるのが「シュリ」。
南北朝鮮の緊張の中、運命に狂う、南の諜報部員と北のテロリストの身分を隠した恋。
平穏な生活の裏に、歴然と存在する歴史の軋み。民族の悲痛。

同胞が銃を向け合う。

日本人には、俄かに想像できない。
そんな簡単なことじゃない。

L君は言う。

「平和なのに徴兵制があるのはおかしいって?
違うんだよ、韓国は戦時中なんだ。
1950年の朝鮮戦争、あれは休戦しているだけで終戦はしていない。
韓国は戦時中の国なんだ」

L君の3年間の兵役はまもなく終わる。
彼が今、何を思うのか、またゆっくりと聞いてみたい。


シュリ Shuri(1999年・韓)
監督:カン・ジェギュ
出演:ハン・ソッキュ、キム・ユンジン、チェ・ミンシク他
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by yukotto1 | 2005-12-12 01:01 | 迫力系映画