生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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Departure-アイランド-

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photo by hikaru

それは、Departure Mailと呼ばれていて、誰かがここを去ることを他の全員に伝えるために送られる。
月に少なくとも1通、あるときは2通、多いときは3通近く届くことがある。
1通のメールで、数人分のDepartureがアナウンスされることもある。

この3年弱の間に、私もDeparture Mailを通算40通以上は受け取っただろう。

そしてついに、私が旅立つことを告げるメールが先日配信された。
不思議だけれど、そんな日がもはや来てしまったのだ。

「落ち着きがない」私は、三十路にして再び、転職をすることになった。



「転職をすることになった」なんていう言い方は受身すぎるかもしれない。
もちろん、それはまぎれもなく自分自身の意志だ。

今年の初夏の頃だったろうか、「アイランド」という映画を観た。
ユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソンが主演のSF映画だ。

世界はウイルスにより汚染され、人間はその施設の中でしか暮らせない。
唯一、「アイランド」と呼ばれる場所を除いて。

クローン人間たちは、自らをクローン人間とは知らず、管理が行き届いた無菌処理の地下施設で暮らしている。
彼らの夢は、いつの日か「アイランド」へ旅立つこと。
「アイランド」へ行くには、不定期に行われる抽選に当たらなければならない。

美しい楽園のイメージが、クローンたちの心を躍らせる。
それが本当はどんな場所なのか、そこに何があるのか、それ以外の場所はどうなっているのか、あらゆることは秘密で、あらゆることが疑問の蚊帳の外にある。
観客は明確な違和感を感じるだろうが、その違和感こそが、クローン人間の無垢さという歪みでもある。

世俗の中で生きる私たちには、その無垢さは直視できない。

この作品を観たときには、まだ転職は具体的なものではなかった。
ただ、なんとなく、いずれということだけが念頭にあった。
私はあのクローン人間のように、あるともないとも分からない「アイランド」に心ばかり駆られているんだと、そんなふうに思った。

いや、違う。
抽選に当たったんじゃない。
これは、意志なんだ。
意志なんだ。

奇妙で滑稽な自問自答を繰り返す。

私はときどき、全部全部、この世のことはあらかじめ決められているんじゃないかという感覚に囚われる。
本当の本当のことは決して知らされることがなくて、想像力の果てが時折、カーテンからはみ出した真実を垣間見てしまうんじゃないかと。
そのとき人は、見てはいけないものを見てしまった言い訳を探す。
そんなことの繰り返しが、コントロールの末端でないかと思ったりする。

「見てて。わたし、飛ぶから」

これ、なんだったかなあ。
なんの台詞だったかなあ。

何かのCMのような気もするし、アニメだったような気もする。
ここ何週間か、私の頭の中で、ずっとこの言葉がリフレインされているのだ。

「見てて。わたし、飛ぶから」

なぜ飛ぶのか。
どこへ飛ぶのか。
それは、本当に飛んでいると言えるのか。
ただ、流されているだけなのか。

何ひとつ分からず、何ひとつ答えがなく、それでも。

それでもただ、「見てて。わたし、飛ぶから」。

その決心を見届けて欲しいと、それだけが私の願い。
この跳躍を、生きている証を、ただ見守って欲しい。

それだけあれば、わたし、飛べるから。



アイランド Island(2005年・米)
監督:マイケル・ベイ
出演:ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソン、ジャイモン・フンスー他
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by yukotto1 | 2006-01-12 00:08 | 迫力系映画