生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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大人の木曜日-グッドナイト&グッドラック-

幼いとき、母親と一緒に「ドラえもん のび太の恐竜」の試写会に行ったことがある。
三ノ宮の新聞会館までおでかけして、映画の後、喫茶店で生まれて初めてレモンティーなるものを飲み(普段コーヒーしか飲まない家庭だった)、帰りの電車でものすごく気分が悪くなった。
そのせいで、その後20年近く一切紅茶に口をつけないというトラウマになった体験だが、試写会というと俄かにそれを思い出す。(今はストレートティーに限って飲むことができる)

それでも、転職してやりたかったことの一つは、試写会に行くこと。
たいていの新作試写会は平日の夜、19時スタートなんかで催されるので、招待券だけ手に入れたものの、(そんなことは最初から分かっていることだが)結局仕事が終わらず行くことができないという例が度々続き、やがて応募すること自体やめてしまった。

それが、今は目についた試写会招待の告知に、かたっぱしから応募している。



平日の夜の過ごし方について考えをめぐらし、思い立ったのが4月の半ば。
スターチャンネルの公式サイトで告知されていた「大人のための試写会」なるものに、まず手始めに応募してみる。

六本木ヒルズのTOHOシネマで25組50名様ご招待。
しかも終了後、グランドハイアットでのジャズライブパーティ付。

なかなかプレミア感があって素敵だわ。
映画の内容を把握することもなく、Webでさくさく応募する。

これがばっちり当選した。
試写会って結構当たるのよ、と大学時代にある友人が言っていたけれど、確かにこれはすごい命中率。

何人か友人を当たり何人かに振られ、4人目に行き当たった友人に木曜の夜18時半、六本木で待ち合わせ。
そうそう、ドレスコードは白と黒だから、よろしくね。
映画がモノクロなのだそうで、それは主催者側が指定したものだった。

白いキャミソールに、今シーズンに買ったばかりの白いシフォンスカートを履く。
まだ夜は肌寒い季節、黒いベロアのジャケットを羽織る。
それからパールのネックレス、イレギュラーカッティングの黒いシンプルなパンプスと、オフホワイトのメッシュベルト。

会社に行くには、少し気取っているかもしれない。(とてもカジュアルな会社なので)
しかも、もしこの試写会がなかったら、白いスカートなんて絶対に履いていかなかっただろうという、あいにくの雨模様、木曜日。

私より先にロビーに着いていた友人は、素材に変化を持たせた全身黒のコーディネート。
シースルーのやわらかいチュニックブラウスの下に、光沢のあるシルクのキャミソールが透けていて、ドレープの利いたワイドパンツをたおやかに履きこなす。
デコルテにかかった艶々としたファーが実に優雅だ。

長身で姿勢正しい彼女ならではのエレガントスタイルにはいつも憧れるのだけれど、持って生まれたボディサイズは似合う似合わないを残酷に選別するからしかたない。
憧れは憧れのまま、身長が伸びる奇跡でも夢に見よう。

そんな少しばかりよそ行きの格好で臨んだ試写会、映画の方は確かに大人の雰囲気たっぷりの作品だった。

ジョージ・クルーニー監督の「グッドナイト&グッドラック」は、赤狩り時代のアメリカで、過剰な検閲に脅かされた報道の自由を守らんとして戦ったアンカーマン、エドワード・マローとCBSのクルーたちの姿を描いた社会派作品。
ジャーナリズムのあり方を、モノクロタッチでシリアスかつスタイリッシュに問うている。

ただ、まあ、正直言って難しい。
おしゃれをして見に行く映画だろうかと首を傾げてしまう。

時代背景やアメリカの政治事情を事前知識として知らなければ、感想以前に到底理解が追いつかない。
もちろんジャーナリズムを志す青年や、あらゆる社会事情に精通した本物の「大人」の方なら十分に楽しめただろう。
けれど私のような「大人」未満の人間は、ああ、そういうことかと話のあらましが分かったのが、およそ半ばを過ぎた頃だった。

それでも楽しみ方は何かしらあるものである。

個人的には、キャストの中に、ツインピークスのローラのお父さんとか、アリーmyラブで最も存在感を放ったアリーの恋人ラリーだとか、好きなドラマの登場人物がいい具合に混じっていることを楽しんだりしたし、いつも以上に老けこんだ味わいで出演しているジョージ・クルーニーの格好良さは当然ながら折り紙つきだ。

友人の方はというと、彼女は趣味でジャズボーカルをしているので、この映画の随所に使われた渋いジャズを随分気に入り、欲しいと言ったサントラをおみやげでもらって嬉しそうだった。

そして何より試写会の後、グランドハイアットで開かれたパーティは、思った以上に雰囲気がよく、グッドナイトとグッドラックとそれぞれ名づけられた二種類のカクテルの味もよく、お料理の種類も多く楽しめて、ジャズライブも心地よかった。
確かに、私がこれまで行ったことのあるどんなパーティより大人っぽい。

おまけに、連れの友人は謎のセレブっぽい男性から、すれ違い様に「社長」の肩書きのついた名刺を渡され、「よかったら連絡ください」と耳元で囁かれるという、びっくりするような「大人」な誘いを受け、二人で密かに爆笑してしまった。

パーティの終わりに、スターチャンネルのスタッフの人に、コメントをとりたいから協力してくれと声をかけられ、よく芸能人がロゴマークがいっぱいついたツイタテの前で立ちインタビューに応えているみたいな感じで、私たちもそこに立たされた。
そこで精一杯にこやかに、内心必死で映画の感想をひねり出す私たちも、随分と立派な「大人」だ。

大人はなかなか大変である。

実に楽しいグッドナイトだった。


グッドナイト&グッドラック Good Night, and Good Luck(2005年・米)
監督:ジョージ・クルーニー
出演:ジョージ・クルーニー、デヴィット・ストラザーン、ロバート・ダウニー・Jr他
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by yukotto1 | 2006-05-11 20:16 | 考えてしまう映画