生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

MADE IN 讃岐-UDON-

「UDON」という映画がクランクアップしたというニュースを知ったとき、讃岐の人々は強い興奮を隠せなかったに違いない。
それは、香川県関係者の私も同様だった。

テーマは、香川県が世界に(?)誇る名産「讃岐うどん」。
大げさな表現ではなく、地元の人は、ほとんど毎日のようにうどんを食べている。
実際、私が母の実家に行くときは、毎日食べていた。
ある香川県出身者は、ランチは基本がうどんで、たまにはうどんじゃないものを食べるという感じだと言っていた。
この間会ったいとこのTちゃんにも確認したが、彼女も学生時代のランチは少なくとも週3回はうどんだったそうだ。
さらに念のため確認したが、アスクユーレストランガイド香川版では、登録レストラン約200店のうち、109店がうどん・そばカテゴリーである。



日本全国名産品は数あれど、讃岐うどんほど地元民の生活に根ざしたものは少ないだろう。
讃岐うどんは土産物屋に並ぶ珍品でもなく、祖先の食文化のすたれた遺産でもない。
イタリア人の主食がパスタで、日本人の主食が白米だとすれば、香川県人の主食は讃岐うどんなのだ。

数年前から、東京は讃岐うどんブームである。
それを銘打った店が増え始め、「讃岐うどんっておいしいよねー」と知ったかぶりに言う東京人が増えた。
私も、友人(もちろん香川県出身ではない)から、讃岐うどんの美味しいお店と言われて連れて行かれたうどん屋がいくつかあるが、正直言って「?」という感じだった。

「まずい」という意味ではない。
「これが讃岐うどんなの?」という意味だ。

私に言わせれば、それは「普通のうどん」だ。
コシが少々強めなのかもしれないが、つるっと食べられる普通に美味しいうどん。
東京で「関西風」と呼ばれるうどんと何が違うのか、さっぱり分からない。
讃岐うどん特有の、ねっとりもっちりとした食感があるわけでなく、これもまた特有の麺の塩味またはかすかな「湯気の匂い」がするわけでもない。

もしかして、麺ではなく汁が讃岐風だと言われるのかもしれないが、讃岐うどんの汁には厳格な特徴はないような気もする。

東京でよく見る讃岐うどんの汁は、くせのない薄口の鰹ダシだ。
確かに本場でも、ぶっかけうどんはこのタイプの汁に浸かっている。

母の実家のうどんは、煮干とどんこ(冬干の椎茸)でとったダシなのだが、濃度の濃い茶色の汁がスープというよりはタレというくらいの量、鉢の底に少し溜まっているだけ。
タレをざっくりからめるようにして、麺そのものの味を楽しむ。

あるいは、生醤油とすだちだとか、ダシ醤油と生卵をからめるだけだとか、「汁」を必要としないシンプルな食べ方も一般的であることを思うと、汁が讃岐風であると主張されてもピンとこない。
あくまで讃岐うどんは麺であって、汁の存在感は大抵の場合薄く、麺を引き立てる役割でしかない。

もしかしたら東京にも本場と同様の讃岐うどんの店があるのかもしれない。
けれど、それはごくごく限られた店だけで、近頃増殖している街中の讃岐うどんの多くは、「名前だけ」のような気がしてならないわけだ。

そんなわけで、私は讃岐うどんは讃岐でしか食べられないと諦めている。
讃岐うどんの話題になれば、食べたことがないというその人を讃岐まで連れて行って、「本物」を味合わせてあげたいくらいの気持ちになる。
だって、本当においしいのだから。

ところで、香川県の食文化としてもう一つ知っていただきたいものがある。
半年くらい前、ある飲み会に香川県出身者がいて、その人の話に「ああ、そういえばそうだった」と思い出したことがあるのだ。

それは、讃岐のお雑煮。

雑煮というのは地方の特色が出るもので、関東では四角い切り餅を焼いて焦げ目をつけ、すまし汁でいただくというのが一般的だし、関西では丸餅を焼かずにやわらかく煮て白味噌でいただくのが通常である、というのは有名な話。
讃岐も白味噌仕立てなのだが、肝心のお餅には、なんと粒あんが入っているのだ。

私自身は兵庫県出身だが、中学を卒業するくらいまで、正月は母の実家でと決まっていたので、年末年始の過ごし方に関しては讃岐スタイルが私のスタンダードだった。
暮れになると餅屋さんにあらかじめ二升ほどの餅米を持ち込み、大晦日の日、まるく整えられた何十個もの小餅を引き取りに行く。
その半分はプレーンな餅で、残り半分はあん餅だった。
年によっては餅つき器を使って自宅で作ることもあり、それをまるく整えるのを手伝ったが、やっぱり半分はあんこ入りで、あんこを入れると餅が不恰好に大きくなってしまってなかなか上手に作れなかった。

あん餅を入れた雑煮は、当然ながら甘い。
想像するほど無茶な味ではないが独特の味わいがあることは確かで、小さい頃から甘いものがそれほど好きではなかった私は、プレーンな餅を入れてもらっていた。
ただ、雑煮ではなく普通に餅を食べるときは、あん入りのものを好んだし、あん餅が石油ストーブの上でぷっくりと膨らんではじけるときの香りは心地いい幸せを運ぶものだった。

しかし、そんな記憶は随分長いこと忘れていた。
最近は正月を讃岐で過ごすこともなくなったし、あん餅雑煮を食べることもない。
だから、それが讃岐特有の食べ物であることも特段意識しなかった。
たまたま同席した香川出身者の一言で、突然よみがえった記憶だったのだが、確かに考えると非常に風変わりな食べ物だ。

讃岐メイドを思い巡らしたとき、私の中で他に特徴的なものとして挙げるとすれば、それは「讃岐人」そのもの。
特に女性は似た雰囲気がある。

フジテレビの中野美奈子アナウンサーは香川出身で、いとこのTちゃんと同じ丸亀高校の卒業生らしいが、中野アナウンサーの雰囲気とTちゃんの雰囲気は結構似ている。
まるい輪郭にまるい頬骨、大きく黒目がちのタレ目で、やわらかくのんびりとした空気、陽気な朗らかさ。
どちらかというと母もそういう系統だし、私の知る香川女性はかなりの確率で似た感じなのだ。

お国柄というのはあるものだが、讃岐はかなりその純度が高いような気がする。
その分、地元民の郷土愛も強いわけで、映画「UDON」の公開は日本で最も面積が小さいこの県民の心を騒がして止まない大ニュースに違いない。

「UDON」は8月23日公開。
もちろん私はまだ観ていないが、公開すれば観ないわけにはいかないだろう。
(観たら感想を加えて記事を書き換えます)

UDON(2006年・日)
監督:本広克行
出演:ユースケ・サンタマリア、鈴木京香、小西真奈美他
[PR]
by yukotto1 | 2006-06-22 22:26 | 笑える映画