生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

ごちそうさま!-木更津キャッツアイ ワールドシリーズ-

呆れていただいて結構だが、私は方向音痴の上に機械音痴だ。
PCもオーディオもテレビもビデオも、基本的に構造を何ら理解しないで、直感的に操作可能な範囲でだけ機能を活用している。
だから、隠された便利機能が購入して数年後に初めて判明するなんていうのはザラなのだ。

1999年4月から2003年2月まで、私は愛知県で暮らしていた。
その間、私が自宅で使っていたテレビは18歳で一人暮らしを始めたときに買った15型ブラウン管で、少し離れると映画の字幕を読むのも厳しいほどの代物だった。

大阪から東京、名古屋と住所を移すたび、テレビはチャンネル調整が必要になる。
遠方への引越し経験がある人には当然すぎることだが、テレビのチャンネルというのは地方によって異なるのだ。

関東でTBSは6チャンネルだが、関西で系列局の毎日放送は4チャンネルとなる。
関東で10チャンネルはテレビ朝日だが、関西では6チャンネルという具合。



名古屋ではそもそも、地上波民放局が奇数チャンネルに映る。
名古屋の人にとっては当たり前のことだが、東京や大阪から来た人には、これが実際、かなりの違和感となる。
関東でも関西でも、(普段観る)テレビは偶数チャンネルであり、スイッチングは4・6・8・10・12と進むのがジョーシキだからだ。

東京から名古屋に引っ越した私は、このパラダイムシフトに少し戸惑っていた。
いや、それどころか、ドサクサの中で、その後の4年間を決定づける、ものすごく大きなミステイクを犯してしまった。
チャンネル調整がうまくできなかったのだ。
そのやり方も分からなかったし、耳に慣れない局名や観たこともないアナウンサーの顔に、どれがどのチャンネルなのかも分からず、ボタンをむちゃくちゃに押してどうにかこうにか数チャンネルが画面に映し出されるようになったところで力尽きてしまった。

まあ、こんなもんだろ、くらいな感じで。

しばらく暮らしてみて、どうやらテレビに映る局数が少ないような気がしてきた。
NHKの他に、民放がどう数えても4局分しかない気がする。
チャンネル選択のボタンを押していくと、どうやら同じ局が2回映っている気がするのだ。

東海テレビ、テレビ愛知、中京テレビ、名古屋テレビ・・・、そしてもう一回中京テレビ。
一つ足りない。

番町皿屋敷並みに数えてみるが、いくらやっても同じこと、いつだって一つ足りない。

それからしばらく、テレビ画面の下のボタンをボールペンで押しつつリモコンをいじって奮闘してみたが、無駄だった。
下手をすると、映るチャンネルが減ってしまったりして、焦って元に戻すのに精一杯だった。
取扱説明書は遠の昔に破棄していた。

それで私の結論は、テレビチャンネルの一つや二つ観られなくたって死ぬわけじゃなし。
そうやって簡単に諦めてしまった。

だから4年間、私はある民放局を観ずに過ごした。
それがCBC。
TBS系列の放送局である。

しかし、私はテレビチャンネルの一つや二つが、どれほど大きな意味を成すかを思い知るようになる。

それはサザンオールスターズの「TSUNAMI」がヒットし始めた冬のことだ。
ある飲み会で誰かが「TSUNAMIっていいよねー。すごい泣けるよー」と言い、その場にいた皆が「あれはいい」と口を揃えた。
私ひとりがピンと来ずに、それって何?という具合に反応した。
それから、福山雅治の「桜坂」のことも、私は皆より一月以上遅れてその曲を知った。

GWに実家に帰ったとき、弟の運転する車のラジオから「桜坂」が流れており、私が「これってそんなに流行っとんの?」と訊いたら、弟は「お姉ちゃん、何言いよんの?」と大げさに驚いた。
「『未来日記』観てないの?」
「何それ?」
「うそや!知らんの?」
「知らん」
「信じられへん!めっちゃ話題やのに。観てへんの?遅れとんで!」

私は「未来日記」を知らなかった。
どうやらそれは社会現象的に流行したそうだが、私は一切知らなかった。
それもそのはず、「未来日記」はTBS系列で放送されていたからだ。
私のうちでは映らない。

「未来日記」を知らなければ、その主題歌だった「TSUNAMI」も「桜坂」も知るわけがない。
どちらも純粋にいい曲だとは思うのだが、「未来日記」の視聴者にしてみれば、「あいのり」とEvery Little Thingの曲が結びつくみたいなもので、各々の曲と番組内のエピソードが結びつき、それが感動を増幅させているのだから、そのノリにはイマイチついていけない。
だから、弟が「3人のクリスマス」という物語の切なさについて一生懸命語るのも、全然ピンとこなかった。

それは、テレビというメディアの偉大さについて知った経験である。

そしてようやく本題に入るが、同じく私の名古屋時代、TBS系列で放送していた番組で、たいそう流行った作品があった。
それが官藤官九郎脚本のドラマ「木更津キャッツアイ」。

さすがに名前くらいはどこかで聞いたことがあった気がするが、その詳細は何一つ知らなかった。
ストーリーはおろか、出演者さえも知らなかった。
タイトルからして、木更津が舞台なんだろうということだけを察することができ、野球のユニフォームらしきものを着ている写真を見たので、勝手に青春野球ドラマだと解釈していた。
つい先日まで、その程度の理解だった。

だから、いつの間にかテレビで見かけるようになったアフロヘアの佐藤隆太を、大泉洋と混同する始末だった。
ここしばらく放送している、岡田准一と桜井翔と阿部サダヲと嶋大輔がむさくるしい部屋で共演する資生堂UNOのCMを観て、CM一つにここまでぶっ飛んだ世界観を作り上げるなんてすごすぎるなー!と感嘆したのも、まったくお門違いだったわけだ。
「木更津キャッツアイ」を常識のように知っている人々は、あのCMを観た瞬間、その遊び心に悶えたことだろう。

その謎が明らかになったのは、つい先々週のことだ。

「木更津キャッツアイワールドシリーズ」、シリーズ完結編となる映画の試写会が当たったのだ。
それは公開10日前、Asmic Ace試写室でブロガーだけを対象に開かれた。

多くの試写会がそうであるように、連絡があったのは当日2日前だった。
その時点で、私は「木更津キャッツアイ」をたった一話も観ていなかった。
私は迷わず、仕事帰り、ありたけのビデオを借りて帰った。

確かに話題になるだけのことはあり、相当に面白いドラマだ。
何よりもキャラクターの個性にシビレた。
ギャグのセンスも含め、実写版「行け!稲中卓球部」みたいだ。
官藤氏本人が語るように、私が大好きな「ロックストック&トゥースモーキングバレルズ」の手法に倣って、一つの物語を逆回転と裏表で描くスリリングでファンキーな構成。
一気に木更津ワールドに引き込まれてしまった。

これまではまらなかったのは、私が名古屋時代にTBS系列の番組を観ることができなかったためだ。
官藤官九郎が好きで、ガイ・リッチーが好きで、「稲中卓球部」が好きなのだから、はまらない要素がない。

たった2日でドラマ6話分と映画一本を観て、気分が木更津MAXな状態で「ワールドシリーズ」鑑賞。
主人公ぶっさんがガンで余命を宣告されるドラマの第一話から、本当に彼が死んでしまう完結編の映画まで、3日で観たというのはなかなかに激動だ。
通常のファンは、2002年のドラマ放送時から「ぶっさん、死ぬ死ぬって言って、いつ死ぬんだよ」と思い続け、「んなこと言って、結局、死なずに天寿全うしちゃうんじゃないの?」なんていう疑りを経て、「大丈夫、キャッツアイはまだまだ続くのさ」という安堵に変わった矢先の完結編に、それなりに衝撃もあるだろうし、切なさや感慨も深いだろう。
だけれど、私の場合、「うわー、なんか面白い話だなー」を一気に味わって、最後に「ごちそうさま!」と手を合わせる気分だ。

もしも次の三連休に何の予定もないという人がいたら、3日で「木更津キャッツアイ」制覇にチャレンジしてみてはいかがだろう。
「ごちそうさま!」
すがすがしくそう言って、2002年以来のブランクを埋める、それもまた悪くない経験のように思える。


木更津キャッツアイ ワールドシリーズ(2006年・日)
監督:金子文紀
出演:岡田准一、桜井翔、岡田義徳 他
[PR]
by yukotto1 | 2006-10-29 23:49 | 笑える映画