生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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静かに暮れてゆく-THE 有頂天ホテル-

友人の家を訪ね、幼い子どもたちと戯れ過ごす。
珍しく人が多いのが嬉しくてしようがないと、楓のような手をぱっと開いて高く挙げ、飛び跳ねて笑う無邪気。
尻尾の短い小さな犬も手伝って、眺めよく港まで見渡せるその部屋は大賑わいだった。

おぼえたての言葉は、半分以上が鸚鵡返しの舌ったらず。
迷いのない瞳を見開いて、繰り返し、繰り返し、世界の姿を確かめている。

子どもの顔がほころぶと、大人の顔もつられてほころぶ。

今日は、よく晴れた冬の一日だった。
各駅停車の扉が開くたび、暖房の効いた車内に冷えた空気が紛れ込んできた。



神戸電鉄粟生線は北へ向かう。
窓の外、山波の先、スイカの果肉と厚い皮の境目のような具合で瑞々しい赤が透明な群青へと連なる、今年最後の一日。

静かに暮れてゆく一日。

大晦日を舞台にした幾つかの映画には、共通のキーワードがある。

三谷幸喜の「THE 有頂天ホテル」は、主役級の豪華俳優が勢ぞろいするコメディだし、同じく高級ホテルでの珍事件を描く「フォー・ルームス」もまた豪華スターによるオムニバス作品。
そして、年越しパーティへと向かう若者たちの長い夜の情景は「200本のたばこ」。

その日、その夜は、皆それぞれ。
ただ、誰の頭の下にも、等しく新しい年が訪れる。
いつもはただの夜なのに、今日だけにとってつけた意味が与えられる。

目を閉じてうたたねする、人気の少ない列車。
いつのまにか、夜の帳。
停車したときの静寂は、故郷の音。

地球が一回、公転した。

本当は、螺旋だけど。


THE 有頂天ホテル(2005年・日)
監督:三谷幸喜
出演:役所公司、松たか子、佐藤浩市 他
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by yukotto1 | 2006-12-31 22:03 | 笑える映画