生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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夏の風、祖母の見舞い-世界の中心で、愛をさけぶ-

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プロジェクトが終わったので、今週はお休み。
そういうわけで、ひとまず実家に帰った。
6ヶ月ぶりの実家。

祖母が1ヶ月ほど前に犬にエサをやろうとして尻もちをつき、腰を痛めて入院しているので、見舞いにもでかけた。
意外でもなかったが、祖母はすこぶる元気で、入院生活を結構楽しんでいるようだった。



おばあさんばかりの6人部屋が気に入っているらしい。
これこそどんぐりの背比べというものだが、この部屋では自分が一番若いのだと祖母は嬉しそうで、80を過ぎても、女性というものは年齢を気にするもののようだ。

病室の窓からは生い茂った緑。
心地よい夏風も吹く。
風鈴でもつければ、さぞよく鳴るだろう。

変な趣味かもしれないが、私は老人だらけの入院病棟というのがわりに好きで、用もないのに、知る人もいない病院へ出かけていくことがあったりする。
そういうときは決まって夏だ。
かぼそい命を照らす走馬灯の火が、ゆったり揺れる、この空気感が好きなのかもしれない。

病室といえば、先月、話題の「世界の中心で、愛をさけぶ」を観た。
お台場の映画館は、泣くために集まった若い女性でいっぱいで、映画も後半になれば、そこかしこからすすり泣きの音が聞こえた。

私も、例外でなく、こりゃ泣けるだろうの期待の中で赴いた。現代人には「泣きたい」願望がある。
この映画、確かに泣きどころは随所にある。
半ばこれみよがしなほど。
けれど、そういうんじゃ、私は泣けないの。

確かにちょっと「くっ」ときた。
でも、なんだろう、どこかで聞いたような話だったからか、読めすぎる展開のせいか。
そして、後になればなるほど、登場人物の心情の、不自然な描かれ方。

美しい背景と美しい俳優(アキ役の女の子は確かにとても魅力的)の中で、ナチュラルな人間の機微を裏切っては、それは不協和音。

そんなにキレイに割り切れるなら、そこまでの苦痛はなんだったのか。
透明感に満ちた思い出は、なんだったのか。

映画向けに付け加えられたという後日談エピソードが邪魔っけだったのかもしれない。

それでもこの映画は、私にとって忘れられないものになった。
映画館を出ると小ぶりの雨で、メディアージュのデッキをふたり、急ぎ足に歩く。
映画の感想を二言三言交わして沈黙が続く。
必然性のないタイミングで、デジャブのような言葉が沈黙を破る。

夏の風が吹く病室で、祖母にその顛末の話をした。


世界の中心で、愛をさけぶ(2004年・日)
監督:行定勲
出演:大沢たかお、柴崎コウ、長澤まさみ、森山未來他
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by yukotto1 | 2004-06-30 01:31 | 泣ける映画