生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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太陽のサーカス-ベルリン/天使の詩-

シルク・ドゥ・ソレイユ。
改めてネーミングの意味を考えたのは、つい先日のことで、シルクというと英語で絹のことを想像していたが、発祥はカナダ・モントリオール、考えてみればそれはフランス語なのだ。

ソレイユは、川原亜矢子の犬の名前だったな。ラブラドール・レトリバーのソレイユ。
意味は太陽。

だから、シルク・ドゥ・ソレイユは、太陽のサーカス。

秘密の呪文で扉が開くように、それは姿を現す。

チケットをとったのは夏だった。
2月に始まる公演の、予約は8月。

一緒に行こうねと約束したのに、間近になって仕事で行けなくなってしまったと残念そうに言う。
私にとっても残念だけど、半分くらいは織り込み済みのことなので「しかたないね」と電話口。



さて、どうしよう。誰を誘えばいいだろう。
考えをめぐらした挙句に電話した相手は、予想もしない反応をした。

「ドラリオン?」
「え?」
「なに?」
「え?シルク・ドゥ・ソレイユ」
「なに?」
「え?知らないの?」

普段テレビをまったく観ないからだというのがその人の主張だが、それにしたってどうかと思う。
街中を歩いていても、いたるところに広告があるし、テレビだけじゃなくあらゆるメディアで取り上げられているし、10年以上前から度々日本で大規模な公演をしているシルク・ドゥ・ソレイユを、その名前さえ知らないなんてどうかしている。

キダムは?アレグリアは?
もちろん、何一つ知らないらしい。
私は呆れて、誘う人を間違ってしまったのかと思った。

私もシルク・ドゥ・ソレイユを観に行くのは初めてだけれど、名前くらいは大昔から知っていた。
モーニング娘。がプロモーションをやっているせいで、勝手に子どもじみたものをイメージしてしまって、これまでは特に興味はなかったのだが、エンタテイメントの達人である同僚のIさんに「一回も観たことないの?一回くらい観た方がいいよ」とアドバイスを受けて思い立ち、プレリザーブチケットをとったのだ。
半年も前にチケットをとると、それまでの間、気をつけて色々とチェックするもので、だんだんに期待が高まってきていた。

「あのさあ、結構これ、行きたい人いっぱいいるチケットだと思うよ」
「あ、そう?だって知らないからさあ」
「えー。なんか誘うのもったいないなあ」
「いやいや、そんなこと言わずに。行くよ、行くから」

翌日、その友人は改めて電話してきて言った。
「なんかすごいんね。会社の人に聞いたら、みんな知ってた。みんな行きたがってたよ」
「でしょう?たぶん、今、エンタメ的には一番ホットだと思うよ」

そういうわけでつい先日、小判をくわえた猫を連れて、公開したばかりのドラリオンに行ってきた。
原宿駅から徒歩10分。

「サーカスはやっぱりテントなのね」
観客席が扇状にステージを囲む。
開演前から、道化師が会場を巻き込んで笑いを作っている。
いかにも宴の前といった浮き足だった雰囲気がドーム型の天井に充満している。

ドイツ映画「ベルリン・天使の詩」で、天使ダニエルは空中ブランコの娘に恋をする。
天使である彼は娘の心の声を聴くことができるが、娘に彼の姿は見えないし、その身体に触れることもできない。
ハリウッドでは「シティ・オブ・エンジェル」としてリメイクされたが、オリジナルのこの映画は、ほぼ全編がモノクロで、陰鬱なイメージが強い作品だ。

天使は永遠の命よりも、愛する存在に自らの姿を認めてもらいたい、愛する存在に触れたいという想いを選ぶ。
愚かな人間の世界に墜落して、天使であることをやめるのだ。

永遠に死が訪れないということは、ある意味では、生きていないということと同義だ。
私たちの生の歓びは、死と引き換えにしか存在せず、新たな生命の誕生は死への約束に他ならない。
だから、天使としての死の後に、人間としての死への始まりに、モノクロの世界は鮮やかな色彩を獲得する。

永遠のモノクロの世界と、ひとときだけの色彩の世界。
私たちはもしかしたら、記憶の外にある過去に、そのどちらを選択するかと問われたかもしれない。
そして私たちはその選択の結果として、今ここに、業深き人として息をしている。

太陽のサーカスの躍動感は、強い色彩を放つ。
極限を求めて、鍛錬を重ねた肉体。
研ぎ澄まされ、しなやかに伸びる指先。

まさに天使が恋焦がれた、生命の輝き。

私には到底あんなこと不可能だと思うのに、生物的な構造は基本的に違いないはずの彼らに、それができてしまう。
どうして不可能だ、無理だと思わなかったのだろうか。
そう思わなかったから、そう思わなかった人だけが、そうできるのだ。

跳び箱が跳べたのは、跳べると信じたから。
とても単純なことなのに、なぜかそれが難しい。

自らを、人間を、信じ貫く彼らの舞いや跳躍に、私たちはただ釘づけになる。

太陽が胸を火照らせて、世界を隅々まで照らし彩る。




ベルリン/天使の詩 Wings of Desire(1987年・仏/西独)
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ピーター・フォーク、ソルヴェーグ・ドマルタン、ブルーノ・ガンツ



シティ・オブ・エンジェル City of Angels(1998年・米)
監督:ブラッド・シルバーリング
出演:ニコラス・ケイジ、メグ・ライアン、アンドレ・ブラウアー


DAIHATSU DRALION CIRQUE DU SOLEIL
シルク・ドゥ・ソレイユ ドラリオン公式HP
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by yukotto1 | 2007-02-12 23:35 | アートな映画