生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

年下の友だち-ネバーランド-

最近、年下の女友だちが増えた、と感じる。
自分が年をとったからでもあるだろうし、同年代の友人の多くが家事や育児に忙しい時期で、なかなか一緒に遊べないというのもあるだろう。

自然な流れなのだろうけれど、それも悪くない。
年下の女性と話をすると、お年頃的諸問題から解放された気楽な楽しさがあるばかりでなく、自分の歩んできた道を振り返って初心を思い出すような、心地よい刺激がある。

目下、私の最年少の女友だちは、若干3歳。

中学以来の友人と私は、週に1回以上電話で話すけれど、その横で「お話しするの。お話しするの」と、一生懸命に主張する幼い声がする。
声の主は友人の娘だが、このところ、びっくりするほど言葉を覚えた。
この春には保育園に通い始める。



すべからく幼児というのは電話が好きで、大人の真似をして受話器を耳に当てたがる。
そのポーズをとることや、並んだボタンを押してみることが、好奇心の矛先となってたまらなく楽しそう。

少し前までは、受話器を奪取してもニヤつくばかりで何もしゃべらなかったり、仮にしゃべっても一方的で意味不明だったりしたが、最近はどうにかそれらしい会話が成立してきた。
こちらの質問に答えたり、話を展開させたりする。
相変わらず滑舌が悪いので、聞き取るのには苦心するが、それでも意味は通っている。

「あのね、パパがKくん(自分の弟のこと)にごはんあげてる」
「Wちゃんは、もうごはん食べたの?」
「うん、たべた」
「何食べたの?」
「えーとねえ、おにくとお、にんじんとお」

女の特性を十分わきまえて、唐突に話題を変えたりもする。

「Wがずきんちゃんで、パパがぜんまいざむらいなの」
「え?」
「Wがずきんちゃんで、パパがぜんまいざむらいなの。それで、ママは~」
「なに?」

友人の解説によれば、NHKで「ぜんまいざむらい」というアニメが放送しており、その主人公がぜんまいざむらいで、ヒロインがずきんちゃんなのだそうだ。
おまけに、ぜんまいざむらいは、ずきんちゃんのことが好きらしい。

面白いことに、この主人公とヒロインの関係というのを、ことごとく自分とパパに当てはめるらしく、「ヤッターマン」なら、パパがガンちゃんで、自分がアイちゃんだという解釈になるらしい。
物語の展開によって、ぜんまいざむらいの恋のライバルである、なめざえもんとずきんちゃんがいいムードになった回を見た後には、パパがなめざえもんに変わってしまうこともあるそうで、最近は、自分をドロンジョ、パパをボヤッキーと言うこともあるのだそうだ。

女の子というのは、ほんの小さな頃から、そういう構図に敏感だ。
それをパパと自分に当てはめるのがかわいらしいのだが、友人と私は「一体いつまでこんなこと言ってるんやろね?」と言い交わす。
「今だけやで。そのうち、パパきらいとか言い出すんやから。ほんま、ありがたい思わなあかんで」
きっと、パパは、過去最高にもてている。

私がWちゃんと直接会ったのは、たぶん3回くらいだ。
一家は神戸に住んでいるので、せいぜい年に1回。

だから、Wちゃんが私の顔をちゃんと認識しているかどうかは疑わしい。
しょっちゅうママが電話で話している相手として、姿が見えないまま、存在を理解している。

「Kくんは、Wのおとうと。Wは、Kくんのおねえちゃん」
Wちゃんは最近、人物の関係性が分かってきたようで、それを説明してくれる。
「ママは?」
「ママはWのおかあさん」
「パパは?」
「パパはWのおとうさん」

そこで、Wちゃんはママにたずねる。
「yukottoちゃんは?」
「yukottoちゃんは、ママの友だち」
「ママの友だち?」
「そう。ママの友だち」

私は、たずねる。
「yukottoちゃんは?」

Wちゃんは言う。
「yukottoちゃんは、Wの友だち」

ちょっと、驚いた。
驚いて、きゅんとして、泣きそうになった。

yukottoちゃんは、Wの友だち。

私たちは、友だち。

ピーター・パンの物語誕生の背景を描いた映画「ネバーランド」では、ジョニー・デップ扮する劇作家ジェームス・バリが、公園で、ある未亡人とその4人の子どもたちと出会い、親しくなる。
父親を亡くした後、心を閉ざした三男ピーターに、ジェームスが空想と物語の楽しさを教え、彼の心をゆるやかに解いていく過程。
その関係は、大人が子どもに接していくというよりは、人と人との友情に近い。
ジェームスもまた、ピーターたちとの交流によって、自分らしさを見つめなおし、そこから新たな創作のインスピレーションを受け取っていくのだ。

小さなWちゃんは、最後に電話口で「yukottoちゃん、またね」と言ってくれる。
「おやすみ」って言いなよとママに促されても、彼女は「おやすみ」って言わない。
彼女はまだ自分が寝たくないから、「おやすみ」って言わない。
だから、「ばいばい」とだけ言って、「おやすみ」とは頑なに言わない。

そんなWちゃんが保育園に入るから、そのお祝いに、絵本を贈ろうと思う。
友だちの門出に、まだ読めないメッセージを添えて。

ネバーランド Finding Neverland(2004年・米/英)

監督:マーク・フォスター
出演:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア、ケイト・ウィンスレット他
[PR]
by yukotto1 | 2008-04-02 19:16 | 切ない映画