生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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こんな夢を、見た-夢-

二日連続で、似たような夢を見た。

大学時代、試験の夢。

出席日数が足りないとか、試験直前なのに全然勉強してないとか、果ては、受講登録してなくて単位が足りない、とか。
卒業の危機に、おののく夢。

きっと、このあいだ山口智久が苦労しながらも明治大学を4年半で卒業したというニュースを聞いたせいだろう。
けれど、今回ばかりでなく、私は何ヶ月かに一度、こういう夢を見る。

勉強した量や時間、その真摯さという点で言えば、高校3年のときが一番だったと思う。
現役のとき大学に落ちたのは勉強量が足りなかったからじゃなく、私の能力が足りなかったからだ。

言い訳も言い逃れもないし、もちろん後悔もない。
苦しい日々だったけど、その頃のことを夢に見ることはない。



大学時代は全く勉強をしなかった。

私の通った大学の法学部では、当時、専門課程の試験は年に1度しかなく、出席も一切とらなかった。
卒論もなく、ゼミ制度もなかった。
それをいいことに、私の大学生活は、バイトと旅行と恋愛に呆ける日々。

教科書はやっと12月に買って読み始める。
どうせ法学部の先生は、それを読んでいるだけだということを知っている。

1月に入ると全てのバイトを休む。
12月の終わりから、1月、2月は図書館とマクドナルドに一日中こもる。

昼も夜も勉強する。
寝て、起きて勉強し、そのうちうたた寝して、また起きて勉強する。

1年分の勉強を、2ヶ月に集中してやる。

それだけやれば十分と思われるかもしれないが、学部レベルの法律の試験というのは、かなり暗記に依存している。(と私は思う)
よく世間で言われるような「六法全書を暗記する」なんていう必要は皆無だけれど、法律の解釈については、かなりの部分、暗記が必要だ。

基本的に、法学の試験では、どこかの誰か偉い人の意見とか、通説という名の判例を、あたかも自分の意見みたいに書くことが求められる。
だから、どこかの本に書いてあったにすぎないことを自分の意見だと勘違いしてしまう学生も多い。
それがいいか悪いかは別にして、法律というのは、ひとまず、「現在の、一般的な解釈」を共有していないことには議論ができないのだから、しょうがない。

というわけで、法学部の単位取得には、相当な物理的勉強量が必要になる。
少なくとも、凡人である私にとっては、かなりの困難だったし、2ヶ月程度の集中学習では十分どころか、確実に足りなかった。
中には、教科書を読破することさえできなかった必修科目さえある。

授業にもまともに出ないくせに妙な律儀さがあり、登録した講義の単位は一つも落としたくなかったので、登録する講義数は端から最小限だった。
たくさん登録してとれる単位だけとるというスタンスの学生が多かった中で、私はちょっと変わっていた。

私の場合、最初から卒業単位ぎりぎりしか登録していないわけで、ひとつも単位を落とすわけにいかない。
しかし、まともに勉強はしていない。

そんな具合だから、試験は綱渡りで、毎回ヒヤヒヤだった。
全部自分のせいで、自分がなまけてたからなのだけど。

思い出すのは結局、ぎりぎりで追い詰められた記憶。
後悔がないほど力を尽くして失敗したことよりも、辛くも成功したけれどそれが単なる幸運にすぎないと思うことの方が、繰り返し夢に見たりするものだ。
本当のことは、いつも、意識下にある。

この記事を書こうと思って、黒澤明の「夢」を見直してみた。
日本映画の巨匠が晩年に製作したオムニバス作品だが、コンセプトは「監督が見た夢」。

各短編は、冒頭、「こんな夢を、見た」と始まる。

確かに誰かの夢の中らしい、不思議さと突拍子もなさ、理不尽さ、無秩序といった、個人的すぎるメタ世界が、実にわがままに描かれている。

夢の中では。

幼いころにも戻れるし、青春時代の恋をなぞったり、果たしえなかった憧れや、原始的な恐怖、漠とした不安、ありとあらゆる過去と未来、現実と虚構を体験する。
決して見たことも触れたこともないと思うものも、これまでの人生の中で、何かしら、接点があったものに違いない。
全部自分から生まれ、自分に返ってくる。

どんなことにも意味があるとしたら、意識下の私が、意識上の私に、今伝えようとしているのはなんだろう。
そういうことも、考える。



夢(1990年・日)
監督:黒澤明
出演:寺尾聰、倍賞美津子、原田美枝子他
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by yukotto1 | 2008-09-25 01:32 | アートな映画