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生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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太宰の耳打ち-人間失格-_a0032317_2336943.jpg

photo by hikaru

何か映画を観ようということになって、友人が提案したのが、公開翌日の「人間失格」だった。
生田斗真が主演なので、アイドル映画なのだろうかとも思ったけれど、太宰治とジャニーズという、あえての組み合わせに少し興味が湧いたので、その提案に乗ってみる。

一般受けしなさそうな映画だが、新宿の角川直営の映画館は、思いの外満席だった。
生田斗真目当てなのだろう、若い女の子のグループが多い。

彼女たちは原作を読んだことがあるだろうか。
そう思ったら、連れの友人も読んだことがないと言った。

私が「人間失格」を読んだのは、大学生の頃だっただろうか。
もう内容はだいぶ忘れた。

だけど、とにかく太宰治は好きじゃない。

ネガティブで破滅的だから。
ナルシストで自虐的だから。

私は、ああいう世界観を好きだと言いたくない。

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# by yukotto1 | 2010-03-07 23:41 | 考えてしまう映画

きょうだい-おとうと-

錦糸町のレイトショーで、200ほどある座席は数えるほどしか埋まっていない。
山田洋次監督作品とあって、観客の年齢は還暦過ぎばかりだ。
そんな中で、私はひとり、席に着く。

会社帰りに「おとうと」を観て、おそらく10年ぶりくらいに映画館で号泣してしまった。
確かにいい映画だったけど、嗚咽を堪えるほど心に効いてしまったのは、私が二人の弟をもつ姉だからだろうか。

弟という存在のことは、日常の中ではほとんど忘れてしまっている。
幼いころはよく一緒に遊んだが、今は、親を想うほども意識に登場しないし、友人ほど近くもなければ、気を遣いもしない。
ただ、彼らが生まれたときから、私が姉で、彼らが弟であるという関係性だけは決まっている。

弟たちは、同じ仕事をしているせいか、互いに素直にならないし、無駄な会話はほとんどしない。
けれど、私と弟たちは、それぞれ仲がいい方だと思う。

それは、私たちと同じく3人きょうだいの、父と叔母と叔父にも当てはまるようで、父と叔父は、兄として、弟としての立場で、互いのプライドを度々ぶつけるが、姉であり妹である叔母は、頑固な男きょうだいの間で朗らかに笑って、いつも優しく、兄を立てたり、弟を守ったりしていた。

3人きょうだいは、叔母が要になっていたのだ。

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# by yukotto1 | 2010-02-25 23:30 | ぐっとくる映画
春色気分-プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角-_a0032317_22214697.jpg
photo by hikaru

ファッション業界に半ば足をつっこんでから、半年以上経つ。
それは、上司の突然の異動に伴って、私のメインの仕事になった。

もともと温め続けた企画が実行フェーズを迎えたという感じなので、やるべきことに迷いはないが、とはいえ、まったく不慣れな世界である。
ロジックを組み立てて仕事するのを主としてきた私にとって、「ファッション」なんていう、感覚的世界で自分が仕事をするなんていうことは、思いもよらなかった。

さながら、「プラダを着た悪魔」の主人公アンディのようだが、以前にその映画についての記事で書いたように、未経験の世界でまず必要なのは、その世界のルールを知ること。

私は、決してファッションに詳しくない。
常識的な、ごくごく普通レベルのセンスしかない。

私が仕事で相手にするのは、バイヤーやスタイリスト、モデル、ジャーナリストといった感性で勝負する人たちであって、彼らとのコミュニケーションを成功させるためには、彼らを理解し、同じ言葉でしゃべる必要がある。

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# by yukotto1 | 2010-02-18 00:44 | ハッピーになる映画
イメージの中で-きょうのできごと a day on the planet-_a0032317_22304314.jpg
photo by hikaru

今このとき、生まれた人もいれば死んだ人もいて、笑う人もいれば泣く人もいる。
タクシーを拾った人もいれば地下鉄を降りた人もいて、雨が降り始めた街のずっと西の村では虹がかかる。
誰かが電話をかけて、誰かの電話が鳴る。
お風呂あがりの君と、洗濯物を干す私。
あるいは、まったく同じ瞬間に、くしゃみをした二人。あくびをした五人。

想像を巡らせると、同じ時間の同じ星の上で、数十億の人間が各々勝手に活動しているという当たり前の事実が全く奇妙に思えてくる。

現実は無限に複次的で、ただ、ごちゃごちゃとしている。
あらゆるところで絶え間なく、生まれて死んで、姿を変えて。

Twitterを始めたら、それが可視化される感覚を知った。
顕微鏡を覗いて、エンドレスな細胞分裂を観察するような感じだ。

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# by yukotto1 | 2010-02-13 02:22 | ぐっとくる映画
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人と人には、それぞれ、ちょうどよい距離感や関係性がある。

燃え上がる熱情だけが運命ではなく、気づくとそばにいる自然な関係にも、すれ違いを繰り返す歯がゆい関係にも、視線で挨拶するだけのさりげない関係にも、固有の運命があると、私はそう思う。

慎重に探りあいながら、あるいは成り行きに任せるままに、収まりのよいスタンスを見つけ、それを維持していくことができるなら、二人の関係は長く続く。
けれど、どちらかが一方的にバランスを崩そうとすれば、途端に脆く崩れてしまうこともある。

「オリヲン座からの招待状」では、小さな映画館を営む夫婦と、住み込みで働く青年との交流が描かれるが、やがてオリヲン座の主人が病死し、未亡人となった妻と青年がふたりきりで同居するようになる。
二人は、主が欠けた劇場を守る同志として、同じ孤独を共有する家族のようなものとして、いたわりあいながら名もつかぬ関係を紡いでいく。
周囲の人は色眼鏡で二人を揶揄するけれど、互いにしか分からないものが確かにあって、時がやがて関係を本物にしていくのだ。

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# by yukotto1 | 2010-02-12 00:17 | しっとりする映画