生活視点の映画紹介。日常のふとした瞬間思い出す映画の1シーンであったり、映画を観てよみがえる思い出だったり。生活と映画を近づけてみれば、どちらもより一層楽しいものになるような気がします。


by yukotto1
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強く冷たい風が水分の多い雪をつれてきた。
アスファルトに薄く積もってぬかるんで、とてもきれいとは言えない。
ブーツの踵に、細心の注意を払いながら歩く。

東京のなごり雪。
3月9日に降った雪。

先週は、日中、コートがいらないくらいの陽気だったのに、この時期の手のひら返しはまったく手厳しい。
思わせぶりもいいところ、そうするほどに恋しくなる春の策略に、毎年まんまと嵌められる。

季節は輪廻の如く。
輪廻は季節の如く。

「瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」

百人一首で私が一番最初に憶えた句で、そして、私が一番好きな句だ。
そして、三島由紀夫晩年の小説を映画化した「春の雪」においても、意味の深い句となっている。

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by yukotto1 | 2010-03-10 01:33 | 切ない映画
原作「サヨナライツカ」の大ファンとしては、その映画化作品を観ないですむわけがない。
これを見るのは、制作発表の日から決めていたことだけれど、いざとなると、期待より不安の方が大きかった。

だいたい、「大好きな原作」が映画化されて「大好きな映画」になった試しなんてあっただろうか。
スクリーンの映像と頭の中で出来上がった勝手なイメージを照らし合わせたときに、あれが違う、これが違うと、比較にばかり目がゆくのは避けられない。

他人が作った映像が自分の作ったイメージを超えるなんてことは、まずないのだから。

昨年の終わりごろ、「見たい映画は?」と尋ねられて、何の思惑もなく「サヨナライツカ」と答えたら、「それを一緒に見に行こうよ」と言われた。

そうだねと約束したのだけれど、内心、少しためらいがあった。
もっと、どうでもいいタイトルを挙げればよかったと後悔した。

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by yukotto1 | 2010-01-25 22:25 | 切ない映画
直前の連休の出来事が私の意識をいたずらにくすぐっていた、火曜スタートの一週間。
最初の二日は、どちらも夕方に大事なミーティングがあって、緊張を帯びた引力と休日明けの遠心力が駆け引きしあう、妙なテンションで過ごすはめになった。
それから解放された途端に、「映画だ。映画を観たい」と思ったのは、どうしてなのだろう。

去年はほとんど映画を観たい気分になることはなくて、友人に誘われたときか、あまりに暇な休日にしか、映画館には行かなかった。
それどころか、自宅で観るDVDでさえ、「何か他にしなければならないこと」の邪魔になるように思えて避けてきた。
その「何か他にしなければならないこと」の正体も分からなければ、実際、本当にそんなものがあったかどうかさえ疑わしいのに。

闇雲な日々はあったけれど、結局実ったものは一つもないし、なんだったんだろうと思うほど、あっという間の一年だった。
ただ、一年の終わりに、自分の心の奥の奥に、とても小さな発見があって、様々なことを肯定できる気持ちになった。

何かやったからかもしれないし、何もしなかったからかもしれない。
まあ、そういうときもある、というくらいにしか、説明ができないし、する気もない。

ともかく、私は突然、「映画を観たい」と思った。

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by yukotto1 | 2010-01-21 23:48 | ぐっとくる映画
彼女の中では、チョコミントほど「誰が食べるのか分からない味」はないらしい。

一方、彼女は、コーヒー味のアイスクリームが大好きだと言う。
コーヒーをそれほど飲むわけではないが、アイスクリームとなると、「あれほど豊かな味わいはない」のだそうで。

私は、コーヒー味のアイスは嫌い。
コーヒーは好きだけれど、コーヒーアイスは嫌い。

好き嫌いが生まれるメカニズムは知らないけど、同じものでも人によって好きだったり嫌いだったりする。

そんなの、あまりにも当然だろうか。
でも、改めて考えると不思議な感じもする。

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by yukotto1 | 2008-09-01 00:37 | 音楽
中学3年生のとき、私には好きな男の子がいた。
今考えても、ドキドキするほど、すごくすごく素敵な男の子だった。

彼が地元の公立高校を志望していると聞いて、私もそこに行きたいと思った。
だから私の志望校は、誰に何と言われても、その公立高校だった。

学校や塾での成績がよかったので、周囲の大人は残念がった。
もっと上を狙えるのに。

親や先生に理由を尋ねられても、私は絶対に本当のことを言わなかった。
「私立に行く意味が分からないから」と言って、断固として、公立志望を曲げなかった。

12月くらいまでその調子だった。

ところが、年末の三者面談ぎりぎりで、私は好きな男の子が明石にある高等専門学校を志望しているという話を耳にした。
それは理系の学校で、どう考えても文系の私が進学することはできない。
けれど、例の私立高校なら明石方面へ同じ電車で通うことができる。

私は、すかさず志望を変えた。

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by yukotto1 | 2008-07-10 20:44 | ハッピーになる映画

夢の間-さくらん-

どんなときでも笑顔を絶やさないというのは、長所だ。
でも、もしも、その笑顔には何もこもっていないんだとしたら、それは、単なる顔の形状であって、癖とか条件反射みたいなものなんだろうと思う。

「笑う鬼だ」

映画「さくらん」で、主人公きよ葉は、本気で惚れた男が自分に向ける笑顔に対してそう呟き、たちまち踵を返す。

肝心なところで、男は彼女を置いて逃げた。
不安になって今こそ信じさせて欲しいとき、本当にその手を求めているとき、男はそれを見ないふりした。
怖気づいたのかもしれない、面倒になったのかもしれない、そもそも最初から本気ではなかったのかもしれない。

傷ついたきよ葉は、吉原を抜け出し、男の真意を確かめに行く。

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by yukotto1 | 2008-07-10 00:46 | アートな映画
梅雨の合間の陽射しは攻撃的だ。
分厚い雨雲に阻まれる鬱憤を、ここぞとばかり晴らそうとする夏至の太陽が、夏だ夏だと主張する。

会社を出て、ちょうど向かいにある店は、1年半くらい前にオーナーが変わり、以前は天ぷら屋だったが今はビストロになっている。
開店当初はランチの料理の質がひどく、その評判で一時閑古鳥が鳴いていたのだが、最近はずいぶん改善して賑わっている。
私も月に何回かは足を運ぶようになった。

内装はいかにもビストロ然としていて、テーブルには赤いギンガムチェックのクロスが敷かれ、壁にはアール・デコなポスターが映えている。
カウンター席の脇の壁にはシネマ・ポストカードがいくつも貼られていて、注文した料理が届くまでの間、私はそのカードのフランス語を解読しよう試みていた。

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by yukotto1 | 2008-06-24 00:08 | アートな映画
「僕、活字中毒なんですよ」
ぱっと見は、活動的で人懐っこく、いかにもやり手の営業マン。
けれど、会話の端々に、幅広い知識と物事の本質を見る知性を感じる。

その理由の一つが、自称「活字中毒」の習慣にあったとは、意外でもあったし、なるほどとも思った。
どういう本を読むのかと訊けば、「なんでも」なのだという。

話題の新書も読むし、自己啓発本も読む。
ビジネス書でも、小説でも漫画でも雑誌でもいい。
本当にどんな本でもいいらしく、それは「一人の時間がもったいない」からなんだそうだ。
一人で食事するときとか、電車で移動するときとか、何もしていない時間がもったいないと感じて、いつでも鞄に本を忍ばせ、束の間を惜しんでそれを読む。
特段共感するわけではないが、そういう気持ちも分からないではない。

「何かいい本ありませんか?」

そう尋ねる表情は、「何か食べるもの持ってませんか?」とでも言うような、ちょっとした飢餓感めいたものがあった。
「なんでもいいんです。なんでも」

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by yukotto1 | 2007-10-11 00:09 |

息吹の約束-卒業-

今年は桜の開花が早いらしい。
折からの暖冬のせい。

卒業式に桜が咲くというのは錯覚で、桜が咲くのは通常、入学式の頃だ。
昨年より一週間ほど早い今年の桜でさえ、満開を迎えるのは4月の頭。

今年の桜が楽しみで、三寒四温の透明な空を見上げる。
どんな桜、どんな新しい季節。

硬い殻がほろほろとこぼれ、新しい何かが姿を現す。
それが、春という季節。
果たされる、息吹の約束。

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by yukotto1 | 2007-03-13 11:26 | 考えてしまう映画
熱いコーヒーを飲みたくなる季節が巡ってきた。
その日の天気予報は、10月中旬の気温だと告げていた。

通勤電車にはストールを巻いた女性が多かった。
私もちょうどでかけるとき、ジャケットを羽織るかストールを巻くかどうしようと考えて、雨が冷たそうだったからジャケットにした。

気温や天候に合わせて飲むものや着るものを変えるのは、当然と言えば当然だけれど、そこに人の息づかいというか、快適に暮らすための知恵というか、あるいは大人のたしなみといったものを、さりげなく感じる。
子どもの頃は、年じゅう半ズボンやミニスカートを履いたり、夏服と冬服の二種類しかない制服に袖を通す毎日なのだから、そういった感覚にはどうしても疎い。
そのかわり、子どもの頃は、今の何倍もの時間を屋外で過ごしたし、田園の稲穂が背丈や色を変えていく姿や、山の木々をざわめかせる風の音の高低や、そういったものを直にたっぷり感じていた。

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by yukotto1 | 2006-09-18 01:03 | ぐっとくる映画